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アビエス・リサーチ制作雑記

上高地の景観を維持するために

(2011年6月28日作成、2011年6月29日最終更新)

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長野県松本市 上高地(明神付近) 2008年12月28日 Nikon D70

 2011年6月25日に長野県小谷村の小谷温泉で会合があったため行ってきました.当日は豊橋市から車を利用しましたが,この約一週間前の6月19日でいわゆる「高速道路休日上限1000円」が終了したため,高速道路利用を飯田〜豊科間に収めて節約しました.

 豊科ICから小谷方面へ北上していくと,国道の電光掲示板に「国道148号小谷村〜新潟県境間通行止め」の表示あり,ぎょっとしました.規定の降雨量に達したか,あるいはどこかで災害が発生したことによる通行止めと思われます.

 姫川もすごい増水でした.どこも川幅いっぱいまで水があり,轟音を上げながら流下していました.南小谷以南でJR東日本大糸線の代行バスとすれ違ったことから,大糸線の電化区間も(少なくとも一部で)運転を見合わせていたようです.

 南小谷〜中土間の姫川を前景に写せる大糸線撮影ポイントも作者が今まで見たことがない増水を見せていました.大糸線と並行する国道148号が通行止めということは,JR西日本の大糸線も恐らく全面運休の上,代行バスすら走らせられない状況と思われました.

 国道148号線で南小谷駅をすぎて最初のトンネル(下里瀬トンネル)の入口手前で通行止めとなっており,誘導棒を持った係員が立っていました.「小谷温泉へは行けますか?」と訊いたところ,通行可とのことですんなり通してもらえた.次の下里瀬トンネル〜中土トンネル間の信号交叉点(トンネルの合間にいきなり交叉点が現れる)でも係員が居たが,小谷温泉側への右折ウィンカーを出すと,どうぞとここも通してもらえた.どうやら小谷村側から小谷温泉へは通行止め区間を跨がずに済むらしかったようです.

 小谷温泉の会場に着くと,糸魚川方から通行止めを食らって妙高高原ルートで迂回してきたという人も居たので,やはり通行止めの影響は大きいです.

 この数日前,6月23日に松本市から岐阜県高山方面へ抜ける国道158号と,158号の中の湯から上高地へ通じる県道で土石流が発生して相当量の土砂が道路に流れ込んで上高地に観光客らが孤立するという事態が発生しました.実は作者は7月上旬に神奈川在住の先輩と北アルプスの笠ヶ岳登山へ行く計画をしており,先輩はバスで平湯まで入ってそこで合流して・・・という予定でしが,この災害でどうしようかということになっています(この文章を書いている28日に片側交互通行で仮復旧したようです).

 作者が初めて上高地に入った1980年代の国道158号は,今で言う「旧道」であり,少しでも雨が降れば道路敷きに土砂が積もるのは当たり前,釜トンネルももちろん旧トンネルで,中は素掘りのまま,電燈もほとんどなかったし,何よりもトンネル内の急勾配に度肝を抜かれました.路線バス(補助席も出しまくりで,補助席は左右側から2席が並列に出るタイプだった)は釜トンネルの素掘りで出っ張った岩盤に激突するのではないかというほどトンネル断面が狭く,急勾配でエンジンを噴かすために排ガス臭がひどく,視界も煙っていました.それが特に長野オリンピックを契機とする道路改良で拡幅,橋りょうやトンネルの新設が相次ぎ,国道158号線は災害には相当に強くなった印象があった中での今回の土石流災害でした.

 険しい国道158号線と県道を辿って上高地に着くと,本当に別天地のような場所です.ある意味,日本離れした景観が広がるのですが,上高地の美しい景観が少なくとも100年ほど続いているのは,梓川に堆積する多量の土砂を「人工的に」運び出したり流路を整備したりしているからに他ならないようです.当たり前ですが,上高地の上流側では毎日のように多量の土砂が梓川に流れ込んでいるわけで,「手付かず」のまま放っておけば上高地の河童橋まで土砂で埋まり,川底が上がって上高地の道路,宿泊施設もほとんどすべて土砂や水の流れに呑み込まれているはずです.

 このため,上高地上流側でも土砂の運び出し等が行われていますが,観光客・登山客の集中する夏季に行うと景観や騒音の面で好ましくないためか,冬にそれらの作業は行われているらしいです.

 写真は2008年12月に上高地へ入った際に撮影した梓川ですが,河川敷に堆積した土砂(石礫)を集め,流路を直線的に整備する工事が行われていました.集めた土砂は恐らく下流(上高地よりも下流)へ運ばれていくものと思われます.こういった工事を行わないと,前述のように上高地はとっくに埋まっているようです.

 ところで,冬季は釜トンネルの南側入口である中ノ湯以北の県道(上高地公園線)は通行止めとなりますが,工事関係車両,緊急車両,宿泊施設等の許可車はバンバン通っており,かつて冬季に旧釜トンネルを徒歩で越えた者のみが許される「冬の静かな上高地」はもはや存在しません.2008年12月の訪問時ももちろん釜トンネルの入口は許可車両のチェックが行われており,一般の登山客らはすべて徒歩で入山することになります.

 ちょうど年末休暇が始まる頃だったため,釜トンネル入口では増加する登山客対応で警察が登山計画書の作成,提出をお願いしていた他,名古屋市に本社がある中部地方の某ブロック紙の新聞記者(女性)も取材に来ていました.その記者は,とある登山客に登山の目的地や日程等を取材しており,取材していた登山客の居住地を訊いていました.

記者:「お住まいはどこですか?」
登山客:「川崎市です.」
記者:(2秒ほど沈黙)「埼玉県・・・ですか?」

 この記者は政令指定都市・川崎市の所在位置を知らないようでした.以来,新聞記者なんてこんなもんだと思って新聞を読むようにしています.(2011年6月28日記述,6月29日加筆修正)



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