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アビエス・リサーチ制作雑記

最近読んだ鉄道関係書籍ベスト3(その2)

(2012年7月8日作成、2012年7月8日最終更新)

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 図書館で借り,最近読んだ鉄道関係書籍のベスト3のうち,1冊(新・鉄道模型考古学N)については昨日記述したので,残り2冊について紹介いたします.

 1つ目は石井幸孝・岡田誠一・小野田滋・齋藤晃・沢柳健一・杉田肇・木宏之・寺田貞夫・福原俊一・星晃著「幻の国鉄車両」,JTBパブリッシング・キャンブックス,2007.です.やはり5年ほど前に発行された書籍ですが,紹介いたします.

 試作機も造られず,主に図面や全体イメージ図等の計画のみでお蔵入りとなった国鉄の車両について,設計の構想,具体的な運用計画,時代背景等を記述した書籍ですが,もしも実物が完成していたら,運用されていたらという妄想が脳内で膨らみ,作者にとっては大変に刺激的な本でした.

 この本の良い点は,豊富な設計図面が掲載されているところです.中にはミリ単位の寸法が入ったものもあり,より具体的に車両をイメージすることが可能です.また,「パース案」等の名称で線路上を走行している想像図が数枚登場しますが,これも実車両を想像する大きな助けになっています.ほとんどの設計図面を清書することなく,当時の原図そのままを掲載しているのも優れた点だと思います.

 東海道新幹線に新幹線コンテナ電車を走らせようとした貨物輸送計画図は秀逸です.p47にある「新幹線コンテナ電車想像図(黒岩保美画)」にはシングルアームでありながら隣接して対向配置されたパンタグラフの図や,コンテナ電車をミリ単位で描いた構想図も掲載されています.

 巻頭カラーにある「東海道新幹線車両の想定図」(パンフレット「東海道広軌新幹線着工」(国鉄)より)にあるコンテナ列車とすれ違う旅客新幹線車両の図は「計画車両の想像を膨らます」といったことを超越し,ツッコミどころ満載の絵です.まるで上野駅や水道橋駅ガード下から見上げる,戦前施工と思しきリベットだらけの鋼製高架橋の間を,アメ車のような乗用車やバスが高架橋脚にいつ激突事故を起こしてもおかしくないほど近接して走行するシーンが描かれており,必見です.

 なお,新幹線コンテナ電車については鉄道ピクトリアル誌2008年1月号(通巻798号)・特集「貨物輸送」のp63-64でも詳しく触れられており,本書と同じ黒岩氏による想像図(ピクトリアル誌のキャプションは「想定画」)も掲載されています.ピクトリアル誌には1963年作成の「新幹線コンテナ電車列車の運転計画試案」(24時間の計画ダイヤグラム)も掲載されており,新幹線コンテナ電車の想像がますます膨らみます.

 多くの著者が関わる本であり,うまく纏めるのが困難だったものと想像されますが,企画プロデュースを行った岡田秀樹氏の手腕も大きかったものと思われます.

2012年6月6日 東海道本線・熱海駅

 ベスト3の残り1冊は草町義和著「鉄道未完成路線を往く」,講談社ビーシー,2011.です.

 鉄道の未完成路線(未成線)を現地踏査や計画図等から考察する本で,前述の「幻の国鉄車両」の路線バージョンとも言え,ジャンルとしての傾向は似ていますが,未完成路線の場合,一部橋脚やトンネル,用地買収のみ成立した土地などが現地に実際に残っている場合も多く,実地踏査を行ってみたい楽しみが膨らみます.

 巻頭に8ページのカラー写真や図はありますが,その他のページはすべてモノクロです.しかし,余計なものを削ぎ落とした路線図は大変に見やすく,ポイントを押さえた未完成路線写真なども情報量として十分です.この本も前述の本も,具体的な計画年や延長などの数値がきちんと示されており,イメージを膨らませるのに役立っています(例えば「本州四国連絡橋公団三十年史」からの断面図等).

 特に驚異的だったのは熱海モノレールの熱海駅前第一ビル断面図です.これは「熱海駅前に誕生する熱海第一ビル公募のご案内」からの引用図なのですが,こんな資料をどこから見つけ出したのか不思議になります.この断面図により,熱海駅前第一ビルのどの辺りに未完成のまま放置されているというモノレール駅があるのか,手に取るように分かります.右の写真は熱海駅1番のりばから見た「熱海駅前第一ビル」です.このビルの地下3階にモノレールのりばが計画されていたと言います.(2012年7月8日記述)



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