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アビエス・リサーチ制作雑記

KENWOOD KT-2020 (FMステレオ/AMチューナー)

(2015年10月9日作成)

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KENWOOD FM STEREO/AM TUNER KT-2020 (発売当時のカタログ画像より)

KENWOOD KT-2020 評価表

 1984年発売,定価74,800円のKENWOOD製シンセサイザー式FM/AMチューナーです.KENWOOD KT-2020の全体写真は発売当時のカタログ写真を他サイトより引用させてもらいました.

 昨日紹介したKT-3030とほぼ同時期に発売され,KT-3030とは兄弟機の関係になります.価格はKT-3030が12万円でしたから,約4割安いことになります.KT-2020の方が安いのに,AMも聴けるということで,明らかにお得感があります.

 KT-3030と外観もソックリですが,中身はかなり異なるようで,両機種を聴き比べると音の傾向も違います.KT-3030が堂々とした音だとすると,KT-2020はバランスの良い万能タイプです.

 なお,AMは評価の対象にまったくしていません.音や機能などの評価はすべてFM部だけです.

 チューナーの音質やデザインについて,5段階(0.5点刻み)で評価を行い,右のようなレーダーチャートにまとめることにしました.評価項目について,簡単に説明します.

 ヌケ: 主に中高音域の音質,特に伸びと分離についての評価です.ヌケの良いチューナーは高音成分が良く聴こえ,すっきりした良音を奏でます.

 迫力: 主に低音域の音質です.楽器全般に言えることですが,低音をきれいに,きちんと出すことは難しいです.弦楽器もヴァイオリンよりチェロの方が良い音を出すのははるかに難しく,金管楽器にも同じことが言えます.歌も同じです,中高音域で歌うのは平易ですが,地声の限界近くの超低音をきちんと鳴らすのは大変です.良いチューナーは低音が像感を持って,迫力ある音で出てきます.

 情報量: FMチューナーは無線の受信機と言えます.搬送波に乗っているFM波をきちんと捉え,検波,増幅する機械です.良い受信,検波,増幅あるいは左右チャンネル分離性能を持ったチューナーは元々のFM波が持っている情報をきちんと音声信号に変換していきます.情報量の多少はチューナーの性能そのものとも言えます.

 音像感: 音声をステレオ再生すると,音像に立体感が生まれ,楽器や演奏者の位置,音の響き,音の強弱など,微妙なニュアンスが感じられるようになります.ステレオセパレーションの値自体も大事ですが,オーディオの世界はその値に比例して音像感が良くなるほど甘いものではなく,楽器それぞれが持つニュアンスや色調の違いをうまく表現したチューナーは,音像感がグっと良くなります.

 所有満足度: デザイン,操作性が良く,堅牢で動作が安定していて,音も良い,となれば,チューナーの所有満足度も上がります.ただ単に「音が良い」「デザインが良い」だけではダメです.チューナーのデザインには部屋が明るい時のルックスもありますが,部屋を暗くしたときに浮かび上がる周波数表示やシグナルメーターなどもデザインの良し悪しに繋がってきます.ボタンやノブの操作フィーリング,パネルや端子の作りなども所有満足度を左右する要素です.

 デザイン: 前述の所有満足度と類似しますが,何台ものチューナーを所有すると,置く場所にだんだん困ってきます.大きくても作りが良くて音も良ければ許せますが,もっと小さく出来るはず・・・といった機種もあります.可能であれば高さも薄くて奥行もそれほどなく,それでいて堅牢で操作性やルックスもいいチューナーが良いチューナーということになります.ルックスも機械然とした良さがあったり,ボタンの配置バランスが良かったり,蛍光表示パネルが良かったり,それらが長寿命設計になっているか,なども評価の基準になってきます.

総評
 KT-2020の音で特に良いのは中高音域のヌケの良さです.明快で締まりの良い音が溢れてきます.では低域は物足りないのか?というと,全くそんなことはなく,音域のバランスが大変優れています.

 KT-3030と聴き比べると,やはり情報量の点で物足りなさを感じます.改めてKT-3030の実力を再認識してしまいます.KT-2020は「バランスが良い」と書きましたが,言い換えればおとなしく収まっている感じで,KT-3030はやんちゃな感じです.音は好みの問題がありますが,私はKT-3030の方が好きです.KT-2020の方が良いという人も居ると思いますし,価格を考えるとKT-2020でも十分に高音質のFM放送が楽しめます.

 PLL検波のチューナーは,定位を含めた音像感が掴みにくい傾向があるように感じます.KT-2020もバランスの良いチューナーですが,ほぼ同じ時期に出た,ほぼ同じ価格帯のチューナー(例えばYAMAHA T-2000など)に比べると音像感がイマイチです.しかし,PLL検波の生き生きとした音は,どうしても騒音の多い環境である自動車のカーステレオで聴くと,その威力を発揮します.エンジンやタイヤ,風切り音や街のノイズの中でもKT-2020のような高音質のPLL検波チューナーで録音した音楽は,弱音や細かい音までよく耳に届いてきます.

 個人的な感想ですが,PLL検波の音の傾向は,飲み物で例えると炭酸飲料のような感じです.口の中でCO2が弾けるあの感じです.

 KT-2020はブラックボディの他に写真でしか見たことがありませんが,シルバーボディのモデルもあったようです.オーディオ機器をブラックで揃えている,とか,シルバーで揃えている,という人も居たりしたことや,色の好みで機種を選ぶ人もあったのかもしれません.なお,KT-3030ではシルバーモデルは設定されていなかったようです.KT-2020の価格帯(実勢小売り価格は5万円程度だったと思われる)は音だけでなく,外観の色も販売戦略で重要だったものと思われます.

 なお,当ページのKENWOOD KT-2020の評価ですが,所有するKT-2020は2015年に調整を行ってもらい,少なくとも数値上は初期性能を発揮している個体を聴いています.自信を持って良い機種とお勧めできます.(2015年10月9日記述,2016年2月1日加筆修正)

KENWOOD KT-2020 規格
型式 DLLDスーパーシンセサイザーFM/AMチューナー
<FMチューナー部>
受信周波数範囲 76MHz〜90MHz
アンテナインピーダンス 75Ω不平衡
感度(75Ω) 0.95μV/10.8dBf
SN比50dB感度 mono: 1.8μV/16.2dBf
stereo: 22μV/38.1dBf
高調波歪率(100%変調)
Wide mono 100Hz: 0.007%
1kHz: 0.005%
50Hz〜10kHz: 0.01%
stereo 100Hz: 0.01%
1kHz: 0.008%
50Hz〜10kHz: 0.03%
Narrow mono 100Hz: 0.05%
1kHz: 0.04%
50Hz〜10kHz: 0.1%
stereo 100Hz: 0.06%
1kHz: 0.05%
50Hz〜10kHz: 0.3%
SN比(100%変調, 85dBf入力) mono: 99dB
stereo: 91dB
キャプチャーレシオ Narrow: 2.5dB
実効選択度(IHF) Wide: 70dB
Narrow: 100dB
ステレオセパレーション
Wide 1kHz: 70dB
50Hz〜10kHz: 55dB
15kHz: 45dB
Narrow 1kHz: 55dB
50Hz〜10kHz: 45dB
15kHz: 40dB
周波数特性 20Hz〜15kHz ±0.5dB
イメージ妨害比(84MHz) 95dB
IF妨害比(84MHz) 110dB
スプリアス妨害比(84MHz) 100dB
AM抑圧比(65.2dBf) 70dB
サブキャリア抑圧比 70dB
出力レベル/インピーダンス FM(1kHz, 100%変調): 0.6V/1.7kΩ
<AMチューナー部>
受信周波数範囲 531kHz〜1602kHz
感度 10μV・250μV/m
高調波歪率(1000kHz) Wide: 0.3%
Narrow: 0.6%
イメージ妨害比(1000kHz) 40dB
IF妨害比(1000kHz) 60dB
選択度(IHF) Wide: 30dB
Narrow: 50dB
出力レベル/インピーダンス 0.12V/1.7kΩ
SN比(30%変調, 1mV入力) 55dB
<総合>
電源電圧 AC100V, 50Hz/60Hz
定格消費電力(電気用品取締法) 14W
外形寸法 幅440×高さ88×奥行331mm
重量 4.5kg


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