アビエス・リサーチ制作雑記
KENWOOD KT-1010F (AM/FMステレオチューナー)
(2015年10月10日作成)
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KENWOOD AM/FM STEREO TUNER KT-1010F (2015年9月撮影)
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KENWOOD KT-1010F 評価表
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1985年発売,定価59,800円のKENWOOD製シンセサイザー式FM/AMチューナーです.KENWOOD KT-1010Fの全体写真は他サイトなどで画像はたくさん見られますので,ここでは周波数やシグナルレベルなどを表示する蛍光表示部周辺部のみ掲載しました.ほぼ真正面から撮影したもので,薄型筐体だということが分かるかと思います.
1983年にTRIO KT-1010という機種がやはり59,800円で発売されており,KENWOOD KT-1010IIにマイナーチェンジした後にこのKT-1010Fが発売されています.KT-1010にはなかったデジタル表示式の蛍光管シグナルメーターがフロントパネルに入り,KT-3030やKT-2020のジュニア機のような外観になっています.
チューナーの音質やデザインについて,5段階(0.5点刻み)で評価を行い,右のようなレーダーチャートにまとめることにしました.評価項目について,簡単に説明します.なお,評価はすべてFMだけであり,AM部は評価の対象外です.
ヌケ: 主に中高音域の音質,特に伸びと分離についての評価です.ヌケの良いチューナーは高音成分が良く聴こえ,すっきりした良音を奏でます.
迫力: 主に低音域の音質です.楽器全般に言えることですが,低音をきれいに,きちんと出すことは難しいです.弦楽器もヴァイオリンよりチェロの方が良い音を出すのははるかに難しく,金管楽器にも同じことが言えます.歌も同じです,中高音域で歌うのは平易ですが,地声の限界近くの超低音をきちんと鳴らすのは大変です.良いチューナーは低音が像感を持って,迫力ある音で出てきます.
情報量: FMチューナーは無線の受信機と言えます.搬送波に乗っているFM波をきちんと捉え,検波,増幅する機械です.良い受信,検波,増幅あるいは左右チャンネル分離性能を持ったチューナーは元々のFM波が持っている情報をきちんと音声信号に変換していきます.情報量の多少はチューナーの性能そのものとも言えます.
音像感: 音声をステレオ再生すると,音像に立体感が生まれ,楽器や演奏者の位置,音の響き,音の強弱など,微妙なニュアンスが感じられるようになります.ステレオセパレーションの値自体も大事ですが,オーディオの世界はその値に比例して音像感が良くなるほど甘いものではなく,楽器それぞれが持つニュアンスや色調の違いをうまく表現したチューナーは,音像感がグっと良くなります.
所有満足度: デザイン,操作性が良く,堅牢で動作が安定していて,音も良い,となれば,チューナーの所有満足度も上がります.ただ単に「音が良い」「デザインが良い」だけではダメです.チューナーのデザインには部屋が明るい時のルックスもありますが,部屋を暗くしたときに浮かび上がる周波数表示やシグナルメーターなどもデザインの良し悪しに繋がってきます.ボタンやノブの操作フィーリング,パネルや端子の作りなども所有満足度を左右する要素です.
デザイン: 前述の所有満足度と類似しますが,何台ものチューナーを所有すると,置く場所にだんだん困ってきます.大きくても作りが良くて音も良ければ許せますが,もっと小さく出来るはず・・・といった機種もあります.可能であれば高さも薄くて奥行もそれほどなく,それでいて堅牢で操作性やルックスもいいチューナーが良いチューナーということになります.ルックスも機械然とした良さがあったり,ボタンの配置バランスが良かったり,蛍光表示パネルが良かったり,それらが長寿命設計になっているか,なども評価の基準になってきます.
総評
KT-1010Fは薄い筐体ながら,良い音がします.音の歯切れ感が良く,1980年代のKENWOODシンセサイザー機の音の傾向にしっかり乗っています.しかし,上級機のKT-3030やKT-2020と聴き比べてしまうと,価格相応の音質と認めざるを得ません.
音の爽快感はありますが,残響や高音の伸びは物足りない部分があります.低音も良く言えば穏やかで,やや引っ込んで聴こえて来ます.しかし,音の粒立ちは良く,高音質です.フロントエンドは5連バリキャップで,受信性能が高く,ある程度アンテナ環境がプアでも安心して使うことが出来ます.
KT-1010Fの良いところは高さが低く,置き場所に困らないことです.これはチューナーを複数台持っている状況下では重要です.本機はチューニングノブを装備せず,チューニングはボタンで操作しますが,シンセサイザー機は導入時に数局をプリセットした後はプリセットボタン(チャンネルボタン)でプリセット局を呼び出すだけなので,はっきり言ってチューニングノブは要りません.チューニングノブがあることにより,通常は筐体がでかくなり,部品点数も多くなることから価格は上昇します.デザイン上はノブがあった方がカッコいいかもしれませんが,KT-1010Fのようなボタン方式はシンセサイザー機では「本来の姿」と思います.
なお,当ページのKENWOOD KT-1010Fの評価ですが,所有するKT-1010Fは2005年に調整を行ったものであり,現在は調整ズレしている可能性があります.そのため,必ずしも初期性能を持ったKT-1010Fではないことを前提としての評価ですので,もっと良い結果が得られる場合もあることをご了解下さい.(2015年10月10日記述,2016年2月1日加筆修正)
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型式 |
4DシステムスーパーシンセサイザーFM/AMチューナー |
<FMチューナー部> |
受信周波数範囲 |
76MHz〜90MHz |
アンテナインピーダンス |
75Ω不平衡 |
感度(75Ω) |
Distance: 0.95μV/10.8dBf
Direct: 10μV/31.2dBf |
SN比50dB感度 |
Distance |
mono: 1.8μV/16.2dBf
stereo: 24μV/38.8dBf |
Direct |
mono: 18μV/36.3dBf
stereo: 240μV/58.8dBf |
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高調波歪率 |
Wide |
mono |
100Hz: 0.008%
1kHz: 0.0055%
50Hz〜10kHz: 0.02% |
stereo |
100Hz: 0.01%
1kHz: 0.0085%
50Hz〜10kHz: 0.1% |
Narrow |
mono |
100Hz: 0.05%
1kHz: 0.04%
50Hz〜10kHz: 0.15% |
stereo |
100Hz: 0.1%
1kHz: 0.1%
50Hz〜10kHz: 0.3% |
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SN比(100%変調, 85dBf入力) |
mono: 99dB
stereo: 91dB |
キャプチャーレシオ |
Narrow: 2.5dB |
実効選択度(IHF) |
Wide: 70dB
Narrow: 90dB |
ステレオセパレーション |
Wide |
1kHz: 70dB
50Hz〜10kHz: 50dB
15kHz: 40dB |
Narrow |
1kHz: 50dB
50Hz〜10kHz: 40dB
15kHz: 36dB |
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周波数特性 |
20Hz〜15kHz ±0.5dB |
イメージ妨害比(84MHz) |
90dB |
IF妨害比(84MHz) |
110dB |
スプリアス妨害比(84MHz) |
100dB |
AM抑圧比(65.2dBf) |
65dB |
サブキャリア抑圧比 |
70dB |
出力レベル/インピーダンス |
FM(1kHz, 100%変調): 0.6V/1.7kΩ |
<AMチューナー部> |
受信周波数範囲 |
531kHz〜1602kHz |
感度 |
10μV・250μV/m |
高調波歪率(1,000kHz) |
Wide: 0.4%
Narrow: 0.8% |
イメージ妨害比(1,000kHz) |
40dB |
IF妨害比(1,000kHz) |
50dB |
選択度(IHF) |
Wide: 25dB
Narrow: 50dB |
出力レベル/インピーダンス |
0.18V/1.7kΩ |
SN比(30%変調, 1mV入力) |
52dB |
<総合> |
電源電圧 |
AC100V, 50Hz/60Hz |
定格消費電力(電気用品取締法) |
14W |
外形寸法 |
幅440×高さ64×奥行319mm |
重量 |
3.5kg |
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