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アビエス・リサーチ制作雑記

Accuphase T-105 (FMステレオチューナー)

(2015年10月14日作成)

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Accuphase FM STEREO TUNER T-105(2015年9月撮影)

Accuphase T-105 評価表

 1980年発売,定価120,000円のAccuphase製シンセサイザー式FM専用チューナーです.Accuphase T-105の全体写真は他サイトなどで画像はたくさん見られますので,ここでは周波数やシグナルレベルなどを表示する表示部周辺部のみ掲載しました.

 重量8.4kg,高さ128mmもあるので,一桁万円クラスのたいていのプリメインアンプより重くてでかいサイズです.Accuphaseの最後のバリコン式チューナーは前年の1979年に発売されたT-103で,1980年からはシンセサイザー式チューナーのみの発売になりました(Accuphase最初のシンセサイザー式チューナーは1978年発売のT-104).1980年代前半はAccuphaseを含め,各社がバリコン式チューナーをやめていきましたが,Accuphaseは特にその切り替えが早かったメーカーと言えます.

 チューナーの音質やデザインについて,5段階(0.5点刻み)で評価を行い,右のようなレーダーチャートにまとめることにしました.評価項目について,簡単に説明します.

 ヌケ: 主に中高音域の音質,特に伸びと分離についての評価です.ヌケの良いチューナーは高音成分が良く聴こえ,すっきりした良音を奏でます.

 迫力: 主に低音域の音質です.楽器全般に言えることですが,低音をきれいに,きちんと出すことは難しいです.弦楽器もヴァイオリンよりチェロの方が良い音を出すのははるかに難しく,金管楽器にも同じことが言えます.歌も同じです,中高音域で歌うのは平易ですが,地声の限界近くの超低音をきちんと鳴らすのは大変です.良いチューナーは低音が像感を持って,迫力ある音で出てきます.

 情報量: FMチューナーは無線の受信機と言えます.搬送波に乗っているFM波をきちんと捉え,検波,増幅する機械です.良い受信,検波,増幅あるいは左右チャンネル分離性能を持ったチューナーは元々のFM波が持っている情報をきちんと音声信号に変換していきます.情報量の多少はチューナーの性能そのものとも言えます.

 音像感: 音声をステレオ再生すると,音像に立体感が生まれ,楽器や演奏者の位置,音の響き,音の強弱など,微妙なニュアンスが感じられるようになります.ステレオセパレーションの値自体も大事ですが,オーディオの世界はその値に比例して音像感が良くなるほど甘いものではなく,楽器それぞれが持つニュアンスや色調の違いをうまく表現したチューナーは,音像感がグっと良くなります.

 所有満足度: デザイン,操作性が良く,堅牢で動作が安定していて,音も良い,となれば,チューナーの所有満足度も上がります.ただ単に「音が良い」「デザインが良い」だけではダメです.チューナーのデザインには部屋が明るい時のルックスもありますが,部屋を暗くしたときに浮かび上がる周波数表示やシグナルメーターなどもデザインの良し悪しに繋がってきます.ボタンやノブの操作フィーリング,パネルや端子の作りなども所有満足度を左右する要素です.

 デザイン: 前述の所有満足度と類似しますが,何台ものチューナーを所有すると,置く場所にだんだん困ってきます.大きくても作りが良くて音も良ければ許せますが,もっと小さく出来るはず・・・といった機種もあります.可能であれば高さも薄くて奥行もそれほどなく,それでいて堅牢で操作性やルックスもいいチューナーが良いチューナーということになります.ルックスも機械然とした良さがあったり,ボタンの配置バランスが良かったり,蛍光表示パネルが良かったり,それらが長寿命設計になっているか,なども評価の基準になってきます.

総評
 T-105の音は一言で表せばシックな大人の音がします.T-105はクォードラチュア(Quadrature)検波です(英語っぽい発音を敢えてカタカナ書きすれば「クウォードラチャ(ー)」になるかと思いますが,通常は「クォードラチュア」「クオードラチャー」「クアドラチャ」などと書かれることが多いようです).この検波方式はテレビ音声用に開発され,製造コストが安く,チューナーの高性能機が衰退した1990年代以降はほとんどのFMチューナーがこの方式です.しかし,検波コイルが温度変化に弱く,90度で最適になる位相シフタ角が保証されず,音が曖昧になりやすい欠点を持ちます.但し,1970年代にはクォードラチュア検波は優秀な検波方式という認識もあったことから,FMチューナーの高級機でも比較的多く採用された方式でした.

 フロントエンドは6連バリキャップで受信性能が高く,ノイズの極めて少ないクリアな音が出ます.クォードラチュア検波のためか,音のヌケはイマイチですが,女性の声などは低く落ち着いて聴こえます.しっとり,まろやかで,これもいい音です.音が太く,どっしりしていて,シャカシャカした軽い音がしないので,聴きやすい音です.

 T-105の周波数プリセットメモリの電源には基盤に固定されたNi-Cd充電池が使われているのですが,この充電池の液漏れ故障が多発しているようで,作者所有の個体は充電回路をダイオードで整流し,リチウム一次電池(いわゆるボタン電池)に交換改造してあります(異常電流対策の抵抗も追加).Accuphase製チューナーではこの充電池トラブルが多いようで,T-106(1984年発売)以降のチューナーはNi-Cd充電池は使わず,リチウム一次電池をメモリ電源としているようです.

 当ページの画像にあるように,アナログメーターはSIGNAL,MULTIPATH,MODULATIONの3種類に切り替えができます.ボタンを押しこむことにより切り替えるのですが,現在のオーディオ機器のような軽いタッチではなく,昔のコタツのスライド式スイッチを押しこむような感触のボタンで,古風な感じがします.蛍光管も1970年代のゴツい卓上計算機の表示みたいな水色で,やや大き目に表示された周波数の数字も時代を感じさせます.Accuphaseデザインの重厚さの中に,古き良き時代の電化製品という風情があります.

 なお,当ページのAccuphase T-105の評価ですが,所有するT-105は少なくとも作者が所有してから調整は行っておらず,必ずしも初期性能を持ったT-105ではないことを前提としての評価ですので,もっと良い結果が得られる場合もあることをご了解下さい.(2015年10月14日記述,2016年2月1日加筆修正)

Accuphase T-105 保証特性
型式 シンセサイザーFMチューナー
<モノラル特性>
実用感度 11.2dBf(2.0μV)
S/N 50dB感度 17.3dBf(4.0μV)
定在波比 1.5
S/N比 80dB(65dBf(1mV)入力)
高調波歪率(65dBf(1mV)入力,
±75kHz偏移,Normal時)
100Hz: 0.04%
1kHz: 0.04%
6kHz: 0.08%
10kHz: 0.04%
IM歪率(14kHz: 15kHz=1: 1) 0.01%(65dBf(1mV)入力,±75kHz偏移)
周波数特性 10Hz〜16kHz +0 -0.5dB
2信号選択度(45dBf(100μV)入力)
妨害波 Normal Narrow
400kHz 60dB 100dB
200kHz 8dB 22dB
キャプチャーレシオ 1.5dB
RF相互変調 80dB
スプリアス妨害比 120dB
イメージ比 120dB
AM抑圧比(65dBf(1mV)入力) 80dB
サブキャリア抑圧比 70dB
SCA妨害比 80dB
出力電圧(±75kHz偏移) 1.0V
<ステレオ特性>
感度 S/N 40dB: 28.8dBf(15μV)
S/N 50dB: 37.3dBf(40μV)
S/N(65dBf(1mV)入力) 75dB
全高調波歪率(65dBf(1mV)入力,
±75kHz偏移,Normal時)
100Hz: 0.04%
1kHz: 0.04%
6kHz: 0.08%
10kHz: 0.08%
IM歪率(9kHz: 10kHz=1: 1) 0.03%(65dBf(1mV)入力,±75kHz偏移)
周波数特性 10Hz〜16kHz +0 -0.5dB
ステレオ分離度 100Hz: 50dB
1kHz: 50dB
10kHz: 45dB
ステレオ切替入力電圧 19.2dBf(5.0μV)
<総合>
受信周波数 76.1MHz〜89.9MHz
アンテナ 75Ω不平衡
同調方式 クォーツロック・フリケンシー・シンセサイザー方式
マニュアル: パルスチューニング
メモリー: 6局
周波数確度 ±0.002%
出力インピーダンス 固定出力: 200Ω
可変出力: 1.25kΩ(最大)
メーター 信号強度/マルチパス/モジュレーション切替式
使用半導体 トランジスタ: 26個
FET: 3個
IC: 24個
ダイオード: 73個
オプト・カプラー: 2個
電源 AC100V, 50Hz/60Hz
消費電力 25W
外形寸法 幅445×高さ128(脚含む)×奥行370mm
重量 8.4kg
別売 ウッドキャビネット A-9(\16,000)


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