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アビエス・リサーチ制作雑記

SONY ST-S333ESX II (AM/FMステレオチューナー)

(2016年2月1日作成)

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SONY AM/FM STEREO TUNER ST-S333ESX II (2016年1月撮影)

SONY ST-S333ESX II 評価表

 1987年発売,定価49,800円のSONYシンセサイザー式FM/AMチューナーです.SONY ST-S333ESX IIの全体写真は他サイトなどで画像はたくさん見られますので,ここではフロントパネルの一部のみ掲載しました.

 1980年代,SONYはアナログのバリコン式チューナーは作らず,シンセサイザー式のみを発売していました.1984年に「ST-S333ES」(定価49,800円)を発売し,以降,「333ESシリーズ」として定価5万円前後の機種を次々に発表していきます.

 「333ESシリーズ」は発売順に,333ES(1984年)→333ESX(1986年)→333ESX II(1987年)→333ESG(1988年)→333ESA(1991年)→333ESJ(1993年)(型番頭のST-Sは省略,以下同様)ですから,本機は「333ESシリーズ」の3番目に当たります.定価は333ESGまで全て49,800円でしたが,333ESAから55,000円に上がります.

 これらの機種はすべてPLL検波です.それにしても,ほぼ毎年のように,5万円前後のFMチューナー中堅機種がモデルチェンジしていたなんて,現在のチューナー事情を考えると信じられない時代と言えます.

 チューナーの音質やデザインについて,5段階(0.5点刻み)で評価を行い,右のようなレーダーチャートにまとめることにしました.評価項目について,簡単に説明します.なお,評価はすべてFMだけであり,AM部は評価の対象外です.

 ヌケ: 主に中高音域の音質,特に伸びと分離についての評価です.ヌケの良いチューナーは高音成分が良く聴こえ,すっきりした良音を奏でます.

 迫力: 主に低音域の音質です.楽器全般に言えることですが,低音をきれいに,きちんと出すことは難しいです.弦楽器もヴァイオリンよりチェロの方が良い音を出すのははるかに難しく,金管楽器にも同じことが言えます.歌も同じです,中高音域で歌うのは平易ですが,地声の限界近くの超低音をきちんと鳴らすのは大変です.良いチューナーは低音が像感を持って,迫力ある音で出てきます.

 情報量: FMチューナーは無線の受信機と言えます.搬送波に乗っているFM波をきちんと捉え,検波,増幅する機械です.良い受信,検波,増幅あるいは左右チャンネル分離性能を持ったチューナーは元々のFM波が持っている情報をきちんと音声信号に変換していきます.情報量の多少はチューナーの性能そのものとも言えます.

 音像感: 音声をステレオ再生すると,音像に立体感が生まれ,楽器や演奏者の位置,音の響き,音の強弱など,微妙なニュアンスが感じられるようになります.ステレオセパレーションの値自体も大事ですが,オーディオの世界はその値に比例して音像感が良くなるほど甘いものではなく,楽器それぞれが持つニュアンスや色調の違いをうまく表現したチューナーは,音像感がグっと良くなります.

 所有満足度: デザイン,操作性が良く,堅牢で動作が安定していて,音も良い,となれば,チューナーの所有満足度も上がります.ただ単に「音が良い」「デザインが良い」だけではダメです.チューナーのデザインには部屋が明るい時のルックスもありますが,部屋を暗くしたときに浮かび上がる周波数表示やシグナルメーターなどもデザインの良し悪しに繋がってきます.ボタンやノブの操作フィーリング,パネルや端子の作りなども所有満足度を左右する要素です.

 デザイン: 前述の所有満足度と類似しますが,何台ものチューナーを所有すると,置く場所にだんだん困ってきます.大きくても作りが良くて音も良ければ許せますが,もっと小さく出来るはず・・・といった機種もあります.可能であれば高さも薄くて奥行もそれほどなく,それでいて堅牢で操作性やルックスもいいチューナーが良いチューナーということになります.ルックスも機械然とした良さがあったり,ボタンの配置バランスが良かったり,蛍光表示パネルが良かったり,それらが長寿命設計になっているか,なども評価の基準になってきます.

総評
 ST-S333ESX IIの音は良いです.PLL検波の特徴でもありますが,ヌケが極めて良く,音が猛烈に澄んでいます.セパレーションも良いためか,定位を含めた解像度も良いです.スピーカーを置いた位置より,左右も広く,奥行きも深く,キレの良い音が聴こえてきます.

 音の傾向はKENWOOD KT-2020(1984年発売)にかなり似ています.あえて違いを指摘すると,333ESX IIの方が分解能重視で,音が整然と出るのに対し,KT-2020は音楽のエネルギーを重視したような生き生きした音作りをしているように感じられます.どちらも良い音です.

 「333ESシリーズ」の中古価格を見ていると,333ESX IIや333ESGに比べ,1990年代に出た333ESAと333ESJは比較的高額です.本来の定価や新しさを考えれば当然かもしれませんが,逆に333ESX IIと333ESGはお買い得です.なお,333ES,333ESXは中古市場にあまり出てきません.

 私は「333ESシリーズ」をすべて聴いたわけでもないので断言は出来ませんが,これら「333ESシリーズ」はどの機種もそれほど音の差はないものと思います.確かに333ESAや333ESJの方が新しく,ゴールドモデルもあって見た目も豪華でデザインも良いと思いますが,現状の中古市場では333ESX IIと,発売期間が長かったため比較的出玉の多い333ESGは狙い目です.

 問題はメンテナンスかもしれません.SONYは2000年頃までは修理サービスもしっかりしており,古い機種でも丁寧に,場合によっては交換した不具合部品も同梱して返却してくれる等,アフターサービスには定評がありましたが,2000年頃を境に修理不能として分解も何もせずにサービスセンターから突っ返して来たりすることもあり,かつての修理体制はどうなってしまったんだ?と感じます.

 333ESシリーズ関連の情報を渉猟すると,基盤にハンダクラックが発生しやすいことや定電圧レギュレータの排熱に問題がある等,メンテナンスしながら使い続けないと,そもそも使えない場合が多いようです.

 なお,当ページのSONY ST-S333ESX IIの評価ですが,所有するST-S333ESX IIは2015年に調整を行ってもらい,少なくとも数値上は初期性能を発揮している個体を聴いています.自信を持って良い機種とお勧めできます.(2016年2月1日記述)

SONY ST-S333ESX II 規格
型式 FM/AMチューナー
実用感度 0.9μV/10.3dBf
高調波歪率(1kHz、wide) mono:0.004%
stereo:0.0075%
実効選択度 wide:65dB(400kHz)
narrow:65dB(300kHz)
周波数特性(1kHz、stereo) 15Hz〜15kHz +0.2 -0.5dB
スプリアス妨害比 120dB以上
SN比 mono:100dB
stereo:92dB
セパレーション(1kHz) 65dB
消費電力 16W
外形寸法 幅470×高さ86×奥行345mm
サイドウッド取外し時:幅430mm
重量 5.2kg

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