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アビエス・リサーチ制作雑記

YAMAHA T-1 (AM/FMステレオチューナー)

(2016年2月2日作成)

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YAMAHA AM/FM STEREO TUNER T-1 (2016年1月撮影)

YAMAHA T-1 評価表

 1977年発売,定価60,000円のYAMAHAバリコン式FM/AMチューナーです.YAMAHA T-1の全体写真は他サイトなどで画像はたくさん見られますので,ここでは電源,機能切替ボタン周辺部と周波数表示の一部のみ掲載しました.

 以前紹介したYAMAHA T-2(1978年発売・定価130,000円)の前年に発売されており,T-2のベースとして,技術や設計の大部分はT-2に生かされたものと思われます.当たり前とも言えますが,「T-1なくして名器T-2はなかった」わけであり,両機を使い比べていくと似ている部分と異なる部分が多数あって興味深いです.

 本機の最大の特徴は薄緑色に浮かび上がる周波数表示部でしょう.目盛,数字,指針すべてが微細な線を用いた表示になっており,部屋を暗くすると,くっきりと,それでいて極めて微細に浮かび上がり,うっとり見とれてしまいます.当ページの写真には写っていませんが,SIGNAL QUALITY,FM TUNINGの指針表示部も薄緑色の照明が入ります.

 YAMAHAのオーディオ機器はデザインが大変良いものが多く,機器の実力以上の良い音が聴こえてくる感覚になります.平面的なさっぱりしたヘアラインアルミのフロントパネルであっても,ボタン類が微細で上品に配列されており,印字されている文字のフォントもスタイルが良く,使用する色数を抑えることによってゴテゴテ感がありません.センスの良いデザイナーがいたであろうことが容易に想像つきます.

  チューナーの音質やデザインについて,5段階(0.5点刻み)で評価を行い,右のようなレーダーチャートにまとめることにしました.評価項目について,簡単に説明します.なお,評価はすべてFMだけであり,AM部は評価の対象外です.

 ヌケ: 主に中高音域の音質,特に伸びと分離についての評価です.ヌケの良いチューナーは高音成分が良く聴こえ,すっきりした良音を奏でます.

 迫力: 主に低音域の音質です.楽器全般に言えることですが,低音をきれいに,きちんと出すことは難しいです.弦楽器もヴァイオリンよりチェロの方が良い音を出すのははるかに難しく,金管楽器にも同じことが言えます.歌も同じです,中高音域で歌うのは平易ですが,地声の限界近くの超低音をきちんと鳴らすのは大変です.良いチューナーは低音が像感を持って,迫力ある音で出てきます.

 情報量: FMチューナーは無線の受信機と言えます.搬送波に乗っているFM波をきちんと捉え,検波,増幅する機械です.良い受信,検波,増幅あるいは左右チャンネル分離性能を持ったチューナーは元々のFM波が持っている情報をきちんと音声信号に変換していきます.情報量の多少はチューナーの性能そのものとも言えます.

 音像感: 音声をステレオ再生すると,音像に立体感が生まれ,楽器や演奏者の位置,音の響き,音の強弱など,微妙なニュアンスが感じられるようになります.ステレオセパレーションの値自体も大事ですが,オーディオの世界はその値に比例して音像感が良くなるほど甘いものではなく,楽器それぞれが持つニュアンスや色調の違いをうまく表現したチューナーは,音像感がグっと良くなります.

 所有満足度: デザイン,操作性が良く,堅牢で動作が安定していて,音も良い,となれば,チューナーの所有満足度も上がります.ただ単に「音が良い」「デザインが良い」だけではダメです.チューナーのデザインには部屋が明るい時のルックスもありますが,部屋を暗くしたときに浮かび上がる周波数表示やシグナルメーターなどもデザインの良し悪しに繋がってきます.ボタンやノブの操作フィーリング,パネルや端子の作りなども所有満足度を左右する要素です.

 デザイン: 前述の所有満足度と類似しますが,何台ものチューナーを所有すると,置く場所にだんだん困ってきます.大きくても作りが良くて音も良ければ許せますが,もっと小さく出来るはず・・・といった機種もあります.可能であれば高さも薄くて奥行もそれほどなく,それでいて堅牢で操作性やルックスもいいチューナーが良いチューナーということになります.ルックスも機械然とした良さがあったり,ボタンの配置バランスが良かったり,蛍光表示パネルが良かったり,それらが長寿命設計になっているか,なども評価の基準になってきます.

総評
 T-1の音は良いです.レシオ検波らしい楽器ごとの音色の違いを聴き分けることができ,音楽が生き生きと聴こえてきます.低域から高域までしっかりと存在感ある音で出ています.当ページの評価では「ヌケ」を3.5点にしていますが,T-2の音があまりにも良すぎるため,相対的に低くなっているだけで,本機には十分に4点は付けられます.

 YAMAHAのチューナーはT-2,T-2000とすべてレシオ検波機を聴いてきましたが,アコースティック系楽器の音が良く,弦楽器,木管楽器の音がリアルに,美しい音で聴こえてきます.

 ボタンの感触も良く,翌年発売の上位機・T-2同様,機能の状態が一目で分かります.この点でもデザインが大変に優れていると言えます.T-2と聴き比べると,同じレシオ検波機として音の傾向は同じですが,定価6万円(T-1)と13万円(T-2)という価格差はやはり感じられます.T-2の方が高音がよく伸び,音が澄んでいます.

 低音は両機とも良く出ていますが,やはり4連バリコン(T-1)と7連バリコン(T-2)の差なのか,音の解像度感などはT-2に明らかに負けます.しかし,2倍以上という価格差ほどの違いはありません.バリコン機としての外観の良さもあり,T-1はお買い得機と思います.

 なお,当ページのYAMAHA T-1の評価ですが,所有するT-1は2015年に調整を行ってもらい,少なくとも数値上は初期性能を発揮している個体を聴いています.自信を持って良い機種とお勧めできます.(2016年2月2日記述)

YAMAHA T-1 規格
型式 AM/FMステレオチューナー
<FMチューナー部>
FM実用感度(IHF, mono, 300Ω) 300Ω:1.7μV(9.8dBf)
75Ω: 0.85μV(9.8dBf)
50dBSN感度 mono: 3μV(14.8dBf)
stereo: 35μV(36dBf)
イメージ妨害比(84MHz) 95dB
IF妨害比(84MHz) 100dB
スプリアス妨害比(84MHz) 100dB
AM抑圧比 65dB
キャプチャーレシオ 1.0dB
実効選択度(IHF) Local: 55dB
DX: 92dB
SN比 mono: 86dB
stereo: 84dB
全高調波歪率
Local DX
mono 100Hz:
1kHz:
6kHz:
10kHz:
stereo 100Hz:
1kHz:
6kHz:
10kHz:
0.05%
0.05%
0.08%
0.05%
0.05%
0.05%
0.08%
0.13%
0.1%
0.15%
0.3%
0.1%
0.5%
0.5%
0.8%
1.5%
IM(混変調)歪率(IHF)
Local DX
mono:
stereo:
0.05%
0.08%
0.5%
1.0%
ステレオセパレーション
Local DX
1kHz:
50Hz〜10kHz:
55dB
46dB
30dB
25dB
周波数特性 50Hz〜10kHz ±0.3dB
30Hz〜15kHz ±0.5dB
10Hz〜18kHz +0.5 -3.0dB
サブキャリア抑圧比 70dB
ミューティングレベル DX: 5μV(19.2dBf)
AUTO DX動作レベル ステレオ時妨害レベル約-50dBにてDX MODE自動切換
<AMチューナー部>
実用感度(IHF) 15μV
選択度(1000kHz±10kHz) 30dB
SN比(80dB/m) 50dB
イメージ妨害比(1000kHz) 70dB
IF妨害比(1000kHz) 70dB
スプリアス妨害比(1000kHz) 70dB
全高調波歪率 0.4%
<オーディオ部>
出力レベル/インピーダンス
FM(100%変調) VR Min〜Max:
VRセンター:
FM(30%変調) VR Min〜Max:
VRセンター:
Rec cal信号333Hz(FM50%変調相当)
VR Min〜MaX:
VRセンター:
0.1〜1V/220Ω
0.5V/2.5kΩ
2.5〜250mV/220Ω
125mV/2.5kΩ

50〜500mV/220Ω
250mV/2.5kΩ
付属機能 レコーディングキャリブレータ
FMブレンドスイッチ, FMミューティング&OTS連動スイッチ
FM IF帯域切換スイッチ(AUTO DX-Normal)
Signal Strength/Quality Meter
FM Tuning ind(Full - Harf Bright)
<総合>
電源電圧 AC100V, 50Hz/60Hz
定格消費電力 11W
外形寸法 幅435×高さ97×奥行376mm
重量 5.7kg

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