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柳ヶ瀬線(北陸本線旧線・木ノ本〜敦賀)

(2010年4月25日作成,2016年12月9日最終更新)

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 このページでは木ノ本〜敦賀間まで敷設されていた北陸本線の旧線(=のちの柳ヶ瀬線)跡について,探索した写真を紹介します.当区間は便宜上,駅ごととせず,路線跡全体を踏査した際の写真を木ノ本から敦賀方に向かって紹介いたします.

引用・参考文献.宮脇俊三編著「鉄道廃線跡を歩く 失われた鉄道実地踏査60」,JTB,1995.
柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 中之郷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 北陸本線木ノ本駅から敦賀まで,現在は木ノ本の次駅である余呉駅から西進して余呉トンネル(1,760m)と4つの小トンネルでぶち抜いて塩津(近江塩津駅)へ行き,そこから北進して野坂山地のいわゆる深坂越えのほぼ直下を深坂トンネル(5,173m)で一気に貫いて福井県側へ出て,新疋田駅,敦賀駅とほぼそのまま北進するルートが採られている.

 しかし,北陸本線の木ノ本以北が開業した1882年には長大トンネルを掘削する技術も未熟だったこともあり,現在線とはルートが大きく異なっていた.すなわち,木ノ本駅からほぼ北進して余呉川沿いに標高を稼ぎ,柳ヶ瀬山の先で西に向きを変えて柳ヶ瀬トンネル(1,352m)で野坂山地を貫いて滋賀県に至るルートで開削された.この区間は勾配も険しく,西日本の太平洋側と日本海側を結ぶ日本の動脈だったこともあって輸送量も大きく,日本の鉄道史を語る上で絶対に避けて通れない数々の歴史を積み重ねてきた厳しい線区だった.なお,この旧線の線形は北陸自動車道とほとんど一致しており,鉄道用地も一部は北陸自動車道に転用されている.

 1957年,ついに現在の新線(現在の下り線)が開業したことにより,木ノ本〜敦賀間の旧線は「柳ヶ瀬線」として分離され,ローカル輸送を担うこととなったが,営業成績は振るわず,1963年にループ線(鳩原(はつはら)ループ)を含む現在の上り線が開通したのを機に柳ヶ瀬線は休止(のちに廃止),バス転換された.なお,このページでは北陸本線旧線時代も含め,便宜的に「柳ヶ瀬線」と表記する.

 上の写真は柳ヶ瀬線木ノ本駅跡.線路敷は国道365号線として共用されたが,ホーム(上りホームと思われる)の一部?は残存しており,記念の駅名標が立っている.写真の左奥が敦賀方面になる.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 中之郷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 ホームだが,原形をよく留めており,写真左の方には信号機(あるいは転轍機)を遠隔操作するワイヤーを引き入れていた空洞と思われる構造が残っていた.恐らく,空洞の奥に信号機(あるいは転轍機)のテコ群があったのだろう.右側には構内の線路を渡るための階段が残っていた.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 中之郷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 前述のホーム階段.上部には恐らく金属製の蓋が閉められるようになっていたものと思われるが,階段最上部にはその蝶番用と思われる鉄の部品が埋め込まれたまま残っていた.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 柳ヶ瀬 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 中之郷駅から営業キロで4.7キロ先に柳ヶ瀬駅があった.現在,駅構内を含め,線路敷も国道365号線に転用されている.相対式ホームだったらしく,バス停の形状にもその名残が現れている.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 柳ヶ瀬 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 上り(木ノ本方面ゆき)バスのりば.トタン葺きの待合室が建っている.入口の左側には「やながせ」とひらがな書きされたホーロー製駅名標があったらしいが,盗難に遭った?のか,訪問時はなかった.これは下りバス待合室も同様だった.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 柳ヶ瀬 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 バス待合室内には公衆電話も設置されていた.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 雁ヶ谷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 柳ヶ瀬駅から営業キロで2.1キロ先には雁ヶ谷(かりがや)駅が設置されていた.駅の位置は県境越えの柳ヶ瀬トンネルの滋賀県側入口で,柳ヶ瀬線を名乗るまでは列車交換等を行う信号場だったらしい(信号場名は同じ雁ヶ谷と表記するが,読みは「かりがたに」).雁ヶ谷では柳ヶ瀬トンネル入口に排煙装置のほか,排煙を促進するため,トンネル入口を布幕で塞いで空気の流入を遮断する隧道幕の装置まであり,その管理も行っていたという.

 写真はその雁ヶ谷駅構内だったであろう付近の写真.左は国道365号線(北国(ほっこく)街道)で,椿坂峠,栃ノ木(県境)と2つの峠越えをして今庄駅まで抜けることができる.右のアスファルト敷きが柳ヶ瀬トンネルへと繋がる県道140号線.左カーブした先に柳ヶ瀬トンネル入口があり,一方通行のため信号機が設置されている(後述).右の黄色い標識が立っている道路は北陸自動車道(下り線)で,北陸自動車道柳ヶ瀬トンネルも大きな口を開けている.

 左の看板だが,柳ヶ瀬トンネルは大型車(路線バス除く),歩行者,軽車両通行止めのため,その旨表示されている.なお,路線バスは現在はまったくないため,公共交通機関による通過は実質不可能となった.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 雁ヶ谷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 柳ヶ瀬トンネル入口付近.雁ヶ谷駅跡地のほとんどは写真右の北陸自動車道の用地として転用されたものと思われる.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 雁ヶ谷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 トンネルは幅が非常に狭いため,恐らく軽自動車同士でも(途中数箇所設置されている待避所以外は)すれ違い不可能と思われる.そのため,信号機規制による一方通行となっている.トンネル入口上部に見えているコンクリート構造物は排煙装置の一部らしい.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 雁ヶ谷 2016年10月22日 Nikon D200 Ai Nikkor 24mm F2S

 前掲から約6年後の柳ヶ瀬トンネル滋賀県側入口.ほぼ変化はない.(2016年12月9日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 雁ヶ谷 2016年10月22日 Nikon D200 Ai Nikkor 24mm F2S

 柳ヶ瀬トンネル入口付近にある石碑.左の碑は2003年に土木学会選奨土木遺産として建てられたもので,上部には平成20年(2008年)近代化産業遺産(経済産業省)として選定された記念の額が追加されている.(2016年12月9日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 雁ヶ谷 2016年10月22日 Nikon D200 Ai Nikkor 24mm F2S

 柳ヶ瀬トンネル入口の福井県側にも設置されているが,滋賀県側にも「大型車通行禁止(路線バスは可)」「軽車両通行禁止」「歩行者通行禁止」標識.詳細は福井県側の写真記述参照..(2016年12月9日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 柳ヶ瀬トンネル(福井県側) 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 柳ヶ瀬トンネルの福井県側入口.トンネル入口付近を覆うように北陸自動車道の下り線が走る.柳ヶ瀬トンネルは延長1,352mで,在来線トンネルとしてはやや長い程度の部類だが,開通した1882年は日本最長のトンネルだったというのには驚いた.このトンネルを自動車で通過すると,狭さももちろんだが,きつい勾配にさらに驚かされる.勾配は福井県側から滋賀県側に向かってほとんどが登り勾配で,蒸気機関車の通過時は機関士の酸欠事故が頻発したという.まさに命がけで柳ヶ瀬線区間は運転していたようである.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 柳ヶ瀬トンネル(福井県側) 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 柳ヶ瀬トンネル入口の道路標識.最上は「大型車通行禁止」.いちおう,「路線バスは可」らしい.真ん中は「軽車両通行禁止」.自転車は通行不可なので自転車旅行で廃線跡を訪れる方は気をつけていただきたい.そして一番下は「歩行者通行禁止」.徒歩でトンネルを通ることは(非常時以外は?)不可.

 標識デザインはいずれも1950年頃の自家用車がやっと普及しはじめた日本の標準的な外観を反映したようなものばかりで,ある意味レトロムードが漂っている.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 中之郷 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 柳ヶ瀬トンネルはレンガ,石積みだが,内部の大部分はモルタルが吹き付けられている.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 刀根〜疋田 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 写真は刀根集落から西に500mほど進んだ場所で,中央の道路は線路敷跡.右の灰色のガードレールは北陸自動車道で,線路敷は北陸自動車道の用地として吸い込まれるようになっていた.左の白いガードレールの道路は県道140号線.写真奥が木ノ本方面になる.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 刀根〜疋田 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 写真右に小刀根トンネルの東側出口が写っている.左の北陸自動車道(下り線)のトンネルと比較すると大きさの違いが相当にある.写真奥が敦賀方になる.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 刀根〜疋田 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 小刀根トンネルの敦賀方出口.ポータルはほぼ原形を留めているものと思われる.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 刀根〜疋田 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 小刀根トンネル内.石積み・レンガ積みの構造がそのまま残っていた.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 刀根〜疋田 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 小刀根トンネルは開口部付近がレンガ積み,内部は下部が石積み,上部がレンガ積みとなっていた.(2010年4月25日記述)



柳ヶ瀬線(北陸本線・旧線) 刀根〜疋田 2010年4月23日 Nikon D200 Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

 小刀根トンネルの敦賀方に架かる橋梁の橋台,橋桁は鉄道時代のまま使われ続けている.(2010年4月25日記述)



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