TOP更新情報カテゴリ路線別列車別鉄道サウンド切符リンク集岩手県の魅力当サイトについて撮影機材

常備乗車券(片道乗車券・軟券)

(2008年12月23日作成,2012年10月26日最終更新)

切符へ戻る

常備軟券へ戻る


中央本線 小野駅発行 2008年6月12日

中央本線小野駅から東京都区内ゆき常備乗車券

 中央本線小野駅はいわゆる「辰野線」と言われる旧本線のもっとも塩尻寄りにある駅で,2008年現在も簡易委託駅となっており,常備券,補充券類の手売りが行われています.

 小野駅には東京都区内までの長距離券が常備されており,青地紋(3日間有効)の比較的高額な券となっています.このような長距離券購入の楽しみとして,経由欄の確認が挙げられますが,この券では「岡谷・三鷹 経由」となっています.

 この経由表記では塩尻回りなのか,辰野回りなのか,どちらが正当なのか判別しがたいところがありますが,正確にはどちらでも乗車可能です.旅客営業規則第157条(選択乗車)第32号では,「小野又は辰野以遠(宮木方面)の各駅と岡谷以遠(下諏訪方面)の各駅との相互間」を乗車する場合,乗車券の券面に表示された経路にかかわらず,川岸経由または塩尻経由のいずれか一方を選択して乗車することができる」,とあるからです.但し,小野から岡谷までの間において途中下車はできないようです.

 ちなみに,小野から岡谷までの営業キロ数ですが,塩尻回りが20.6km,辰野回りの方が17.8kmとなり,旧線を通った方が距離は短くなります.しかし,列車本数等を考えると塩尻に出たほうが便利なため,この乗車券を買った際も窓口の職員に「塩尻からの特急券は?」と言われ,当日乗車する立川までの自由席特急券を料補にて発券してもらいました.このように,東京方面へ向かう旅客のほとんどは塩尻経由のようです.なお,小野から都区内(東京駅)までの営業キロ数は,塩尻経由が231.0km,辰野経由が228.2kmなので,どちらも同じ3,890円の距離となります.

 この乗車券の発駅欄には「小野」とだけ書かれていますが,湖西線にも同じ「小野」駅があるため,こちらの中央本線小野駅は正確には「(中)小野」と表示すべきようです.このように,きっぷを細かく探ると様々な「物語」が潜んでおり,切符を調べる趣味のおもしろさを次々と再認識してしまいます.

 また,冒頭に「小野駅は−中略−もっとも塩尻寄りにある駅」と書きましたが,1983年7月にみどり湖経由の短絡線が開通するまで,小野〜塩尻間に「東塩尻信号場」というスイッチバック式の信号場があり,仮乗降場として旅客ホームが設置され,市販の時刻表にも「(臨)東塩尻」として発車時刻も載っていた.さらに,信号場でありながら切符の販売も行われていたということです.但し,仮乗降場(臨時駅)であるため,発駅は東京・飯田線方面であれば「塩尻から」,松本・名古屋方面であれば「小野から」の表示,運賃だったようです.(2008年12月23日記述,2011年11月27日加筆修正)




大糸線 有明駅発行 2008年2月

大糸線有明から名古屋市内ゆき常備乗車券

 大糸線有明駅には自駅から東京都区内までの長距離常備乗車券が設備されているようですが,他に「名古屋市内ゆき」も設備がありました.

 有明から名古屋まで,営業キロは206.5kmあるため,行先は単駅とならず,「名古屋市内」ゆきとなります.そのため,有効期間も201キロ以上の3日間の券になります.経由欄は「神領」となっており,通常の「千種」ではありません(千種は名古屋市内に含まれるため).

 2008年現在,JR東日本長野支社管内は常備券類を扱う簡易委託駅が比較的多い地域として知られているものの,名古屋(市内)ゆきの長距離常備乗車券を設備している駅は非常に少なく,前掲の小野駅や篠ノ井線冠着駅は設備していません.しかし,有明駅ではこのように設備があった他,長野駅を越した飯山線内の上今井駅替佐駅で設備のあることが確認されましたので,次に掲載したいと思います.(2008年12月23日記述,2011年11月27日加筆修正)




飯山線 替佐駅発行 2008年7月

飯山線替佐から名古屋市内ゆき常備乗車券

 飯山線替佐から名古屋市内ゆき片道乗車券です.経由欄は「松本・神領」となっています.ちなみに替佐には東京都区内ゆきも設備されており,こちらは自駅発と長野発の2種類が設備されていました(2008年現在).

 替佐の隣駅の上今井も同様に常備券や補充券の設備がありますが,上今井には「名古屋市内ゆき」はないという上今井にも「名古屋市内ゆき」乗車券は設備されています(2011年11月現在).

 また,替佐には「長野から名古屋まで」の常備自由席特急券も設備されていました.(2008年12月23日記述,2011年11月27日加筆修正)




飯山線 上今井駅発行 2011年11月

飯山線上今井から名古屋市内ゆき常備乗車券

 前掲の替佐より一つ豊野(長野)寄りにある上今井にも「名古屋市内ゆき」の片道常備乗車券の設備がありました.券面レイアウトを含め,運賃も同じ4,620円です.

 名古屋市内ゆきが設備されている背景には,長野から名古屋方面へ向かう特急「しなの」号の存在が大きいかと思います.前項で記述したように,替佐には「しなの」号に対応する長野から名古屋までの常備自由席特急券の設備もあるのですが,上今井にはありません.「しなの」号の自由席特急券については料補による対応となりました.(2011年11月27日記述)




飯山線 替佐駅発行 2008年7月

JR東日本最後?の「東京山手線内ゆき」常備乗車券

 中央本線の長野県最初の駅が信濃境で,2008年現在も常備券類を設備する簡易委託駅として営業が続いています.

 信濃境は東京駅から営業キロ178.2kmの位置にあるため,山手線内の各駅へは「東京山手線内ゆき」のきっぷになります.ところで,2008年現在,東京駅から101km以上201km未満の場所に位置する常備券取扱い駅はこの信濃境の他にあるのでしょうか?

 中央本線で信濃境以遠(以西)で常備券を設備している東京からの最短駅は小野駅になりますが,前掲のように東京駅まで200kmを超えるため,「東京都区内ゆき」になってしまいます.とするともはや全滅かというと,臨時駅ですが鹿島サッカースタジアム駅に設備があります.

 鹿島サッカースタジアム駅は東京駅から営業キロで116.3kmの場所に位置しており,駅前の鹿島サッカースタジアムにてサッカーの試合が開催される日にはこの駅で常備券の臨時発売(臨発)が鹿島臨海鉄道に委託される形態により行われれており,自駅から東京山手線内ゆきの乗車券の設備もありました.表題に「JR東日本最後?」と「?」を付けたのはこのためです.(2008年12月23日記述,2011年11月27日加筆修正)




鹿島線 鹿島サッカースタジアム駅発行 2009年3月

鹿島サッカースタジアムから「東京山手線内ゆき」常備乗車券

 前掲の中央本線信濃境駅から東京山手線内ゆき片道常備乗車券の項に挙げた「鹿島サッカースタジアムから東京山手線内ゆき」片道乗車券です.鹿島サッカースタジアム駅はJR東日本鹿島線と鹿島臨海鉄道大洗鹿島線(及び鹿島臨港線)の境界にある駅ですが,駅至近の「鹿島サッカースタジアム」でサッカーの試合(等のイベント)が開催され,臨時停車する場合以外は一般旅客が乗降できない臨時駅となっています.

 作者がこの券を購入した2009年3月7日はサッカーJリーグの開幕日で,鹿島対浦和の好カードによる試合が組まれており,JR鹿島線から鹿島サッカースタジアム駅直通の臨時普通列車も設定されました.また,同年3月14日のダイヤ改正日に併せて,この鹿島サッカースタジアム駅も「東京近郊区間」に含まれることが決まっていました.東京近郊区間はぶっちゃけて言えば実際の乗車経路にかかわらず,もっとも短い距離により運賃計算を行うことができる区間(範囲,但し経路に新幹線を含めた場合は除く)のことですが,片道乗車券の有効期間は距離に関係なく発売当日限り有効となり,途中下車は不可です.

 そのため,鹿島サッカースタジアム駅が大都市近郊区間に含まれると,画像の画像の券にある「発売日共2日間有効」や「東京山手線内各駅(□山表示駅)下車前途無効」といった表記はすべて改める必要があります.よって,この年(2009年)の3月7日がこの様式による「東京山手線内ゆき」乗車券発売の最終日ではないかと言われていました.

 わざわざこの券のために鹿島サッカースタジアム駅まで赴くのも如何なものかとためらっていましたが,「もしも鹿島対浦和のチケットが手に入ったらば行ってしまおう」と決意してチケット発売日の発売時刻に某コンビニの端末を操作したところ,購入できてしまいました.Jリーグ観戦と常備券収集を目的に「鹿島サッカースタジアム」に赴き,臨発の窓口で購入したのがこの券です.

 「鹿島サッカースタジアム」という11文字にも及ぶ長い駅名が印刷された味わい深い常備券となっています.同駅で発売されていた近距離常備券は赤地紋の金額式片道乗車券(金片)でしたが,この券だけは青地紋となっています.

 2009年5月現在,ネット上の掲示板書き込み情報などを総合すると,やはりこの常備片道乗車券は廃札となったようで,東京山手線内ゆきに関して臨発では補充券で対応しているようですが,ひょっとするとこの画像とは異なる表記,様式による「東京山手線内ゆき」常備乗車券が登場するのかもしれません.2009年夏ごろに本当に赤地紋で「発売当日限り有効」「下車前途無効」が印刷された山手線内ゆき乗車券が口座入りしたようです.(2009年5月19日記述,2010年3月12日一部加筆・修正,2011年11月27日加筆修正)




篠ノ井線 冠着駅発行 2008年1月(上)・2009年1月(下)

2種の「冠着から東京都区内ゆき」常備乗車券

 2006年,常備券類を設備していた篠ノ井線の田沢駅や稲荷山駅で相次いでPOS端末が導入されたことにより,冠着駅はこの路線で唯一常備券類が残る駅となってしまいました.

 冠着の長距離常備乗車券には「東京都区内ゆき」の設備がありますが,これには「中央東線経由」と「長野新幹線経由」の2種を取り揃えていました.2009年1月現在,「東京都区内ゆき」への複数の異なる『経由』を常備しているのはこの冠着が最後ではないかと思われます.

 右画像の上が中央東線経由,下が長野新幹線経由の片道乗車券です.東京都区内までは中央東線回りよりも長野新幹線経由の方が距離が短く,安い(250.1kmで4,310円)のは少し意外な感を持ちました.なお,長野新幹線開通以前は長野駅を経由せず,冠着から篠ノ井〜信越本線経由で計算することになり,かつての運賃計算キロは229.9kmと短かかったため,運賃はワンランク安い3,890円であったものの,新幹線開業によりほぼ篠ノ井〜長野間往復分を運賃計算距離的に損をすることになってしまいました.

 ちなみに,この文章内で『経由』にわざわざ二重鉤括弧を付けたのは,東京都区内ゆき常備乗車券で「経由」ではなく,異なる「発駅常備」を複数設備している駅が2009年1月現在もあるためです.一つは飯山線替佐駅で,「自駅(替佐)発東京都区内ゆき」と,「長野発東京都区内ゆき」(いずれも長野新幹線経由)の設備がありました(次掲).

 東京方面への常備特急券(自由席特急券)は2009年1月現在,「松本〜新宿(A自由席特急券)」と「長野〜東京(新幹線自由席特急券)」の設備がありましたが,料金はそれぞれ2,310円と3,570円でかなりの差があります.しかし長野新幹線の利用を長野〜大宮間の乗車に留めると,新幹線自由席特急料金は2,520円と,東京まで行くより1,050円も安くなります.特に急ぐ旅でなければ,新幹線は大宮で降りてあとは普通列車で東京(都区内)を目指した方が金銭的にはメリットが大きいです.ちなみに冠着には2009年1月現在,料補の設備があり指定券類も発券可能であるため,時間があれば指定席を求めることも可能である.(2009年1月19日記述,2011年11月27日加筆修正)




飯山線 替佐駅発行 2008年9月

替佐駅発行「長野から東京都区内ゆき」常備片道乗車券

 前掲の「冠着から東京都区内ゆき」乗車券の項で述べた替佐駅発行の発駅「長野」・着駅「都区内」の片道乗車券です.自駅が発駅とならない常備乗車券は現在では非常に珍しいものと思われます.

 2009年5月現在,飯山線では「簡易委託駅でPOS端末が未設置の駅」が信濃浅野,上今井,替佐,信濃白鳥,平滝,横倉と6駅もあり,それら全駅で「東京都区内ゆき」常備券の設備があるようですが,なぜか替佐だけは自駅発以外に「長野発」の常備券も設備されていました.

 この理由は,自駅(替佐駅)から長野までの定期券や回数乗車券をすでに所持している旅客が多いため,自駅発以外に長野を発駅とした都区内ゆきの需要が多いためのようです.替佐以外の駅でもこの「長野から都区内ゆき」の設備はあってもいいような気がしますが,現状では替佐のみです.

 実に不思議な常備券なのですが,この常備券をさらに不思議にさせているのが表記されている経由です.「飯山線・新幹線経由」となっていますが,長野発(いわゆる長野新幹線経由)であれば,飯山線はまったくかすらないはずなのに,なぜか経由に入っています.この「新幹線」は上越新幹線経由なのでしょうか?.もし長野発で飯山線・越後川口・越後湯沢・上越新幹線経由の都区内ゆきであれば,運賃計算キロは365.0キロ(6,090円)となり,券面の運賃とまったく合わなくなります.

 また,この券はスタンプだらけになっています.まず,最初に「20. 1. 18」の日付印が押されていますが,二重取消線と駅名小印でもって印を無効としています.恐らく,自駅(替佐)から都区内行きまでを発券する際に誤ってこの券を出してしまったものと思われます.その無効とした日付印の脇に実発行日の印が押され,下部には使用開始日を表示するための,いわゆる「から有効」印を押印してあります.(2009年5月19日記述,2011年11月27日加筆修正)




岩泉線 岩泉駅発行 2010年2月

岩泉駅発行「盛岡から東京都区内ゆき」常備片道乗車券

 前掲の替佐駅には,券面の発駅が自駅ではなく,「長野から東京都区内ゆき」の常備券が設備されていることを書きましたが,2010年現在,JR東日本にはこのような自駅以外を発駅とした都区内ゆき常備券を設備した駅がもう二駅あります.一つは岩泉線の終点,岩泉駅です.

 時刻表の路線図を見ると,岩泉〜盛岡間は岩泉線と山田線を利用すれば効率よくL字型に鉄道で移動できるように見えますが,実縮尺の地図を見ると岩泉線は全体的にC字型に湾曲しており,岩泉から茂市へ向かう線形はどちらかというと太平洋側の宮古方面へ近づくような線形をしています.岩泉駅〜盛岡駅間をJR岩泉線と山田線で行くと,営業キロは100キロを超えますが,地図上で両駅間の直線距離を測定すると実は58キロ程度しかありません.つまり,岩泉〜盛岡間を鉄道で移動するとかなり遠回りになります.

 また,当日中に東京へ到着するには,岩泉駅発8:01と17:20の列車しかなく,盛岡駅までの所要時間も3時間以上かかります.このようなこともあり,岩泉町在住者は盛岡までの移動に鉄道を利用することは残念ながらほとんどなく,1日4往復が運行(2010年3月現在)されているJRバス東北の路線バス(岩泉早坂高原線)等を利用しています.バスは岩泉〜盛岡間をほぼ直線状(国道455号を使用)に走るため,移動時間は2時間程度です.

 以上のように,岩泉〜盛岡間はバス,盛岡〜東京間は東北新幹線での移動が主体です.そこで,盛岡を発駅とした常備券の需要が発生するため,画像のような券が設備されているようです.但し,自駅(岩泉)から東京都区内ゆきの常備乗車券も設備されています.なお,岩泉から大宮ゆきについては,都区内ゆきと同額(9560円)のためか,その設備はないとのことです.

 券面の経由ですが,「東北線」となっています.盛岡〜東京間は全線が東北本線です.替佐駅発行の乗車券では「新幹線」となっていましたが,これは恐らく第3セクターしなの鉄道経由と区別するためで,東北本線盛岡以南では(東北)新幹線と平行(在来)線を区別する必要はないという判断からこのような表記になっているものと思われます.(2010年3月11日記述,7月3日,7月31日加筆修正,2011年11月27日加筆修正)




信越本線 古間駅発行 2011年6月

古間駅発行「黒姫から東京都区内ゆき」常備片道乗車券

 2011年現在,JR東日本管内で自駅以外を発駅とした都区内ゆき常備券を設備した簡易委託駅3駅のうちの一つである,信越本線古間駅発行の券です.

 古間駅で唯一常備している長距離片道乗車券は東京都区内ゆきで,経由は長野新幹線です.ところが,発駅は古間駅よりも一駅分離れた黒姫駅になっており,発駅を「古間から」とした「都区内ゆき」の設備はありません.

 この理由は,古間駅がJR東日本直営の黒姫駅が管理駅となっているため,長野新幹線経由の東京都区内ゆきは黒姫駅発,古間駅発ともに同額であることから,管理駅の黒姫発としたことが理由のようです.古間駅に常備されている長野までの往復乗車券も,古間発・黒姫発ともに同額であるためか,発駅が「黒姫」となった券がありました.但し,2011年現在でこのような「簡易委託駅から着駅までの普通運賃が管理駅と同額の場合で,管理駅発の経路に発行簡易委託駅を含む場合,常備券は管理駅発とする」みたいな券を設備している駅を少なくとも作者は古間駅以外に知らず,稀な例と思われます.

 以上,JR東日本管内の常備軟券を設備した簡易委託駅において,発駅が自駅以外となっている「東京都区内ゆき」を3駅紹介しましたが,その理由らしきものが,替佐駅は「長野駅までの定期券所持客が多いため」,岩泉駅は「盛岡駅までバス等の鉄道以外で移動する旅客が多いため」という「新幹線のターミナルまでの移動」に関わるものでしたが,古間駅では「管理駅と同額だから」という理由らしいところが特殊な感を持ちます.(2011年7月2日記述)




(上)・岩泉線 岩泉駅前駅発行 1996年5月
(下)・岩泉線 岩泉駅発行 2004年1月発行

「駅前駅」発行券

 岩泉線の終点,岩泉駅には1日3本の列車しか来ないものの(2013年現在は代行バス),出札窓口が営業しています.岩泉駅が開業したのは現在の岩泉線が全通した1972年で,開業当時から岩泉駅出札窓口は国鉄バス岩泉駅前駅,として管理,運営されていました.

 1987年にJR化した際も,JRバス岩泉駅前駅として営業が継続され,当初は硬券を売っていたようですが,平成に入ってしばらくすると軟券に切り替わったようです.

 画像の上の切符は1996年に岩泉駅出札窓口で購入した盛岡ゆきの片道乗車券です.発行箇所は「岩泉駅前駅発行」になっています.経由は「区界」になっており,上盛岡経由とした方が分かりやすい気がしますが,趣味的にはうれしい表示と言えます.

 一方,画像の下の切符は2004年に購入した同じ盛岡ゆきですが,発行は「○ム岩泉駅」になっています.2000年にJRバスが岩泉地区から撤退したようで,それに併せて駅の管理主体が変わり,通常の簡易委託駅において購入した券と同じ自駅発行の表記になっています.ちなみに,「○ム」の「ム」ですが,「無人駅」の頭文字を取った「ム」ではなく,「無配置駅」(駅員無配置)の「ム」を意味するようです.2枚のきっぷを並べてみると,発行場所の表示と運賃が変わっただけですが,書体なども微妙に変化しているのが分かります.(2008年12月23日記述,2013年10月26日加筆修正)




(上)・大糸線 信濃大町駅発行 2008年1月
(中及び下)・大糸線 ワンマン列車内発券 2008年1月

季節営業駅・ヤナバスキー場前の常備券とワンマン列車整理券

 大糸線のヤナバスキー場前駅はその名の通りヤナバスキー場のすぐ前に位置しており,冬季の12月から3月にかけてのみ列車が停車します.乗車券の販売は「ヤナバスキー場」に委託されており,常備券が数種類設備されていますが,最近は駅窓口に委託職員が詰めていることがほとんどないようです.

 画像の一番上の券はヤナバスキー場前駅から最安の大人片道乗車券です.委託駅で販売券種(区間)に制限もあることから,「○ム」の表示が必要なはずですが,この券にはそれがどこにも見当たりません.

 なお,マルス券や車内補充券発行機による乗車券(類)では「ヤナバスキー場前」の券面表記は2行に亘って表示されていますが,常備券では1行に収められていました.

 画像の中間及び下は大糸線のE127系ワンマン列車内で発券された乗車整理券の表と裏面です.整理券では8文字に及ぶ「ヤナバスキー場前」という文字が入りきらないためか,「ヤナバスキー」とだけ表示されていました.

 ちなみに,ヤナバスキー場前で押印してもらった駅名小印は「簗場スキー場前」となっており,なぜか「ヤナバ」が漢字で表記してありました.このように,マルス券や常備乗車券は正当な「ヤナバスキー場前」が表記されていますが,整理券は「ヤナバスキー」,駅名小印は「簗場スキー場前」と多様な表記が見られました.(2008年12月23日記述,2013年10月26日加筆修正)




北陸本線 王子保駅発行 2009年3月

(片)矢印式常備乗車券(JR西日本)

 北陸本線王子保駅の金沢方面次駅は武生,米原方面次駅は南条で,両駅とも大人片道180円の距離となっています.王子保からそれぞれの次駅までの片道乗車券で着駅名を表示せず,片道運賃のみを表示する「金額式片道乗車券」であれば「王子保→180円」の1種類で済みますが,王子保では着駅を表示した矢印式乗車券を設備しているため,2種の180円区間券が設備されていました.

 JR西日本の片道乗車券の常備券設置駅で金額式の場合,赤地紋ですが,このような矢印式の場合は青地紋になるようです.いわゆる定期券サイズの券で,高級感漂う青地紋の乗車券は非常に秀逸です.(2009年5月19日記述,2013年10月26日加筆修正)




飯山線 信濃浅野駅発行 2009年3月

信濃浅野駅常備の140円区間一般式と金額式片道乗車券(JR東日本)

 飯山線信濃浅野駅の越後川口方面次駅は立ヶ花,豊野方面次駅は同線始点の豊野駅です.いずれも大人片道140円区間の駅となっています.

 画像のように,立ヶ花までは一般式のいわゆる「からゆき」券が設備されていますが,豊野駅へは「140円区間」と表示された金額式片道乗車券を発券するようです.金額式の設備があるならば,同運賃区間の一般式は不要と思うのですが,なぜかこの2種の設備があります.

 それにしても,信濃浅野から立ヶ花までの一駅,1.7kmの距離を乗車する旅客は多いのでしょうか.この「信濃浅野から立ヶ花ゆき」の一般式片道乗車券が「趣味発券」以外で出番となることはなかなかないような気がします.(2009年5月19日記述)




北陸本線 金沢駅発行 2008年11月

金沢〜津幡間の復路専用乗車券(金沢駅常備)

 旅客営業取扱基準規程第151条 (分岐駅通過列車に対する区間外乗車の取扱いの特例)では分岐駅を通過する列車に乗車する場合に,復乗することになる区間の営業キロは含めずに運賃計算することが認められています.津幡〜金沢間もこの特例区間に含まれていますが,復乗経路上で途中下車する場合には該当区間の往復運賃が別途必要となります.

 金沢駅では買い物等で途中下車する旅客が多いためか,津幡〜金沢間の「復路専用乗車券」が常備されています.往復乗車券と同じ効力のため,2日間有効となっており,青地紋です.(2009年5月19日記述)




東海道本線 名古屋駅発行 2008年11月

名古屋〜金山間の復路専用乗車券(名古屋駅常備)

 こちらは名古屋駅改札口に常備されている金山〜名古屋間の復路専用乗車券です.金山駅は元々中央本線の駅で,東海道本線には専用ホームがなく,全列車が通過していました.しかし,金山駅はJRの他に名古屋市営地下鉄との乗換駅であり,名古屋駅の至近でもあることから利用者が多かったため,1989年7月に名古屋鉄道も金山橋駅を現在の金山駅に移転させて開業,同時に東海道本線にも専用のホーム(島式ホーム)を設け,JR(東海道本線及び中央本線),名鉄,市営地下鉄との相互乗換が可能な金山駅としてリニューアルした歴史を持っています.

 1989年7月9日の東海道本線金山駅開業以前までは中央本線の終点は名古屋駅であり,金山〜名古屋間の復乗はあり得ませんでしたが,前述のように東海道本線にも「金山駅」が出来たことから,金山〜名古屋間には分岐駅通過列車に対する区間外乗車の取扱いが発生することになりました.それに併せて登場した復路専用乗車券が右の画像の券のようです.

 金山に「(中)」が付いているのは根室本線にも同名の「金山(かなやま)」駅があるためです.現在の路線図を見ると愛知県の「金山駅」は東海道本線の駅のように見えますが,開業の歴史からしてもれっきとした中央本線の駅です.

 また,この券面には「途中下車前途無効」の印が押されています.恐らくこの常備券作成時には金山〜名古屋間にある尾頭橋駅(1995年3月開業)は未開業だったものと思われます.また,この券には小児断線がありません.となると,小児専用の「復路専用乗車券」の設備もあるのかもしれませんが,未確認です.(2009年5月19日記述)




信越本線 長岡駅発行 2008年10月

長岡〜宮内間の復路専用乗車券(長岡駅常備)

 長岡駅ラッチ内改札には右の画像の復路専用券が設備されています.大きさはA型で,2日間有効のためか青地紋となっています.

 この券の存在を知った後に長岡駅改札口へ行って,長岡〜宮内間の復路専用券を趣味購入したいとお願いしたところ,発券要件を満たす乗車券を所持していないと発券できないと断られ,購入できませんでした.

 そこで2008年10月に上越線高崎方面から宮内経由で信越本線直江津方面へ向かう101キロ超えの乗車券を予め所持していた際にわざわざ長岡駅改札口へ寄って購入したのがこの券です.券面左側には発売年月日の印を押すはずですが,失念したようで日付印はありません.(2009年5月19日記述,2013年10月26日加筆修正)




信越本線 長岡駅発行 2008年12月

六日町〜犀潟間の区間変更券(長岡駅常備)

 長岡駅ラッチ内改札には前掲の復路専用乗車券の他に,右の画像の区間変更券を設備しています.この券は,六日町〜犀潟間のほくほく線経由の乗車券所持者が宮内回りで乗車した(する)際に発券する区間変更券です.券面にあるように,「原乗車券とともに使用する場合に限り有効」です.そのため,この区間変更券を入手するためには,少なくともほくほく線全線を含み,その区間が未使用で有効な乗車券が必ず必要となります.この券の発券枚数に応じて,ほくほく線(北越急行)との運賃配分が生じますから,原券を伴わない趣味発券は必然的にしてもらえません.

 有効期間の部分は手書きで対応するようになっています.これは原券の有効期間により有効日数に違いが生じるため,手書き対応になります.この区間変更券ですが,宮内駅には設備されていないようです.この券が発券されるようなパターンはほとんどが上越新幹線利用の旅客と思われますので,宮内駅にあっても出番となることはまずないのでしょう.(2009年5月20日記述)




釜石線 宮守駅発行 2008年9月

耳付き常備券

 JR東日本のA型軟券の場合,同一のきっぷ10枚分が短冊状に連なった形で受託者の手元に届くようになっています.きっぷ同士にはミシン目が入っており,容易に分離可能となっています.短冊状になっている最上部には右の画像のような券種(この場合,金額式のため「金」),金額式の金額区間(大人/小人),そして発行駅名が入った券片(ほぼB型券のサイズ)が付いており,きっぷ収集家の間では「耳」と呼ばれています.

 受託者によって,手元に届いた10枚綴りの乗車券類はそのまま短冊状にして吊るしておく駅や,すぐに1枚1枚切り離して券箱に納めている駅など取扱いがいろいろです.宮守駅では事前に切り離すことなく管理していたため,運がいいと「耳つき乗車券」に当たる場合があるようです.

 作者が宮守駅を訪れた際,受託者さんの手元にある320円区間の耳付き券が目に入りました.「もしよろしければそれを耳付きのままで売ってもらえませんか?」と訊いてみたところ売っていただけました.通常であれば耳を切り離して販売するものと思います.

 収集家によっては耳のある券番が来るまで何枚も購入したり,あるいは短冊状になった10枚モノ(あるいは11枚モノ)をそっくりそのまま購入したりする猛者もいるようです.

 JR九州の簡易委託駅で扱っている金片の耳付き常備乗車券もこのページにアップしました.(2009年5月21日記述,2013年10月26日加筆修正)




岩泉線 岩泉駅前駅発行 1999年10月(上),岩泉駅発行 2009年7月(下)

岩泉駅から180円区間券

 岩泉線岩泉駅の出札窓口(委託)の管理主体が,2000年にJRバス東北から岩泉町に移管されたことはこのページ内でも紹介しました.それに伴い,常備券面に印刷されていた「岩泉駅前駅発行」が,「○ム岩泉駅発行」に変わりました.

 右の画像は1999年のJRバス東北管理時代の最安区間(180円区間)券(上)と,それから10年後の2009年の最安区間券(下)です.発行箇所の違いの他に,上の券面上部には「東日本会社線」の文字が入っていません.恐らくエラー券の一種と思われます.

 それらのこと以外にもフォントやその大きさ,位置などがかなり異なっています.また,小児断線の傾き具合もかなり違っており,新旧の券を比較するおもしろさがあります.それにしても,1999年の訪問時に購入したのはこの「最安区間」券だけでした.他の区間も同様に「東日本会社線」が入っていなかったのか?など,興味は尽きません.もっといろいろ買っておけば良かったと後悔ばかりが残ります.(2009年8月8日記述)




中央本線 信濃境駅発行 2009年3月(上・下)

信濃境から東京方面への長距離券(1)

 中央本線信濃境駅には,このページでご紹介した山手線内までの常備乗車券の他に,中央本線の東京方面の電車特定区間(いわゆるE電区間(死語))内着となる長距離常備券の設備があります.

 右の画像ですが,上の券は高尾〜日野間までの121〜140km区間に相当する2210円券です.この区間内に含まれ,特に主要と思われる「八王子」駅も印刷されており,小児断線にはその「八王子」のみが印刷されています.

 下の券は同様に立川〜荻窪間までの141〜160km区間に相当する2520円券で,やはりその区間の主要駅と思われる「吉祥寺」が前述の券と同様に印刷されています.

 これらの営業距離の区間内には横浜線や武蔵野線の駅も含まれますが,それらは券面には記載されていません.特に需要の多い中央本線の駅のみを着駅として表示したものと思われます.

 2009年現在,2日間(以上)有効となる常備乗車券で「都区内」が着駅となるものはかなり残存していますが,都区内(山手線内)周辺の駅(または区間)が着駅となった常備券は非常に種類が減少しており,信濃境駅のこれらの券は貴重な存在と言えそうです.(2009年10月5日記述)




中央本線 信濃境駅発行 2009年9月(上)・妄想券(下)

信濃境から東京方面への長距離券(2)

 前掲の信濃境から中央本線電車特定区間のうち,高尾〜日野と立川〜荻窪は設備がありますが,阿佐ヶ谷〜大久保の区間については設備がありません.

 右の画像のうち,上の券は信濃境駅の窓口で「中野までの乗車券をください」と言って発券されたものです.信濃境から阿佐ヶ谷〜東京駅間までの各駅は,営業キロは161〜180kmの間に含まれるため,運賃は2940円となります.そのためか,阿佐ヶ谷〜大久保間各駅が着駅となる乗車券については右上の「東京山手線内ゆき」で代用して発券しているのが実状です.発券の際に,窓口の委託職員の方から,「中野で下車する際には途中下車と言って下さい」と言われました.

 中野までであっても,東京山手線内までであっても運賃は同じですので,旅客サイドが不利になることは特にありませんが,強いて探せば突発的な運休等による振替輸送等が発生した際に,目的地が例えば中野駅の場合,「本来の目的地でありながら,券面では『途中駅』」であるような場合に中野駅まで代替輸送してもらうに当たり,説明の手間等が増える可能性はあります.

 いずれにしても,常備券を取り揃えなければならない信濃境駅としては口座を余分に持つ必要がなく,合理的な発券方法とも言えそうですが,趣味的には右画像下に表示したような「阿佐ヶ谷・中野・大久保間」ゆき(画像加工で「ゆき」を入れ忘れてしまいました・・・)のような券も設備してあった方が楽しいと言えそうです.

 どうしても目的地(この場合,中野駅)までの着駅表示が入った乗車券が欲しい場合,信濃境駅で「補片」や「出補」といった補充券による対応が可能なのか(そもそもそれらの設備があるのか?)は特に訊いていないため不明です.

 それにしても,信濃境駅からだと阿佐ヶ谷駅も東京駅も運賃は同じ2940円です.となると,例えば阿佐ヶ谷へ行くような場合は,荻窪までの乗車券(2520円)を買って,着駅で精算(荻窪〜阿佐ヶ谷間の130円)した方が「お得なきっぷの買い方」にはなります.(2009年10月5日記述)




予讃線 鬼無駅発行 2010年2月 表面(左)・裏面(右)

予讃線鬼無駅から大阪市内ゆき常備片道乗車券

 JR四国・予讃線鬼無駅には大阪市内までの比較的遠距離の常備片道乗車券がありました.鬼無駅の近距離乗車券(100キロ以内)はすべて赤地紋で金額式でしたが,大阪市内行きは3日間有効の青地紋券で矢印式です.

 券の大きさは補片等と同じで,そのためか裏面には補片に印刷されるべきことが書かれていました.券の表面には「大阪市内下車前途無効」の文言はないので,裏面の文言が印刷されていること自体は特におかしくはないと思われます.

 裏面の左上の部分に文字がないのは,小児断線で切り落としたときに裏面の文字情報を切り落とさないようにするための工夫です.なお,鬼無駅にはこの乗車券の区間のうち,山陽新幹線区間となる岡山から新大阪までの常備新幹線自由席特急券の設備もありましたので,別ページで紹介しました.(2010年3月15日記述)




明知鉄道 恵那駅発行 2009年1月(上)・
名古屋鉄道 新鵜沼駅発行 2008年3月(下)

JR東海管内の社線駅発行常備乗車券

 JR東海の簡易委託駅を含むすべての出札窓口では常備券類の取扱いは原則なくなり,マルス端末による発券のみとなっています.マルス端末のない簡易委託駅(例えば中央本線古虎渓駅)ですら管理駅が予め発行したいわゆる「前出しマルス券」を設備する等,徹底的に「マルス発券化」を進めています.

 しかし,JR東海が社線(民鉄)に販売等を委託した窓口では硬券(例えば吉原駅岳南鉄道出札窓口等)すら未だに扱っているほどで,連絡乗車券を含めるとJR東海管内で有効な乗車券,特急券類では常備券がまだかなり幅を利かせています.

 右の画像はJR東海の駅と隣接する社線出札窓口で常備されているJR東海内完結の軟券乗車券の一例です.上は中央本線恵那駅に隣接する明知鉄道恵那駅の出札窓口で販売していた片道乗車券で,補片と同サイズの大型軟券です.券面右下に社線駅発行を表す「○社恵那駅発行」と印刷されています.

 ○○円区間と書かれた金片で,発売当日限り有効の券のため,赤地紋です.小児断線がハサミの1回の動作で切り落とせる斜めの直線になっています.明知鉄道恵那駅出札窓口にはこの180円最安券の他に数種類の101キロ未満のいわゆる近距離乗車券の口座があります.

 下の画像はJR高山本線鵜沼駅に隣接する名鉄犬山線新鵜沼駅出札窓口(西側)に常備されていた金片ですが,名鉄改札口の検札印が押されたため,鵜沼ではなく「新鵜沼」の改札印となっています.2009年3月の鵜沼駅改修工事完了によりJR鵜沼駅改札口が橋上化し,新鵜沼駅との改札分離が行われたため,このような常備軟券の発売は終了したようです.

 2枚を比べると,恵那駅では左端のいわゆる「耳」を付けたまま発売していましたが,新鵜沼駅では耳を切り離して発売していました.(2010年4月15日記述,10月24日加筆修正)




近鉄名古屋線 津駅発行 2009年1月(上)・2009年5月(下)

近鉄津駅発行のJR東海常備軟券乗車券

 津駅はJR東海,近畿日本鉄道(以下近鉄),伊勢鉄道の3社が共同利用しており,西側の近鉄出札窓口ではJR線の近距離片道乗車券を常備軟券で発売しています.

 券の様式は前掲の明知鉄道恵那駅,名鉄新鵜沼駅発行のものと同一で,社線で発行したことを表す「○社津駅発行」の表記もあります.券面では伊勢鉄道か近鉄か発行元は分かりませんが,近鉄が発行しています.

 右の画像で2枚の同じ券を並べたのは上の2009年1月発行の券では常備券の束にパンチャーで丸穴を空けてそこに紐を通し,そこから券をもいで発行していたのに対し,下の2009年5月発行の券では穴は空けずに発券していた違いがあったためです.本来乗車券類は破損させるべきものではないことから,下のような発券が正規のものと言えそうです.

 この2枚は券番が約800番も離れています.券番どおり発券されているものと仮定すると,5ヶ月間で800枚,1日あたり5枚以上が売れていることになります.津駅西側の出札ではこれ以外の運賃のJR線乗車券も設備されていますから,西側改札からJR線を利用する人はかなり多いものと思われます.(2010年4月15日記述)




近鉄鳥羽線 伊勢市駅発行 2010年4月

近鉄伊勢市駅発行のJR東海長距離常備軟券乗車券

 ここまでに紹介した明知鉄道恵那駅,名鉄新鵜沼駅,近鉄津駅のJR東海会社線用の大型常備軟券はすべて近距離券で,各駅には近距離の口座しか設備されていませんが,伊勢市駅の近鉄出札(北口)にはJR線で100キロを越す長距離片道常備券も設備されています.それも3口座が設備されているようで,webで情報を渉猟したところ,右の画像の「九鬼・賀田間(ゆき),1890円」のほか,「熊野市・紀伊市木間(ゆき),2210円」,「新宮(ゆき),2520円」があるようです.

 長距離券のため,青地紋で有効期間が2日間となります.経由の欄もありますが,空欄です.この券は行先が紀勢本線の九鬼(くき)三木里(みきさと)賀田(かた)と小駅ということもあってか,ほとんど売れないようで,券番は2桁でかなりヤケていました.

 それにしても,常備券類の発売箇所や口座数が極めて少なくなった現在,webで検索,情報渉猟すると,どこの駅に何の口座が売っているか,あるいは最近廃札になったか,といったことがかなり調べられます.この乗車券もwebなしには知り得なかった券で,このような珍しい行先の券が買えてうれしいような,知らなければ買うこともなく済んでいたような気もして,少し複雑な心境です.(2010年4月15日記述,9月10日加筆修正)




大船渡線 細浦駅発行 2011年2月

大船渡線細浦駅発行の長距離常備軟券乗車券2種

 細浦駅は盛岡支社管内でも数少なくなった常備軟券の手売りが続いている簡易委託駅です.片道乗車券では2口座の長距離(101キロ以上)乗車券がありました.

 自駅から東京都区内ゆきと,仙台ゆきです.右画像上部の東京都区内ゆきは「千厩 経由」とあるので,大船渡線・東北線経由です.ところが,下部の仙台ゆきは「涌谷 経由」.とあるので,大船渡線・気仙沼線・石巻線・東北線経由ということになり,東北本線へ出るルートがそれぞれ異なっています.

 細浦〜仙台間の営業キロ数は「千厩経由」が190.4キロ,「涌谷経由」が163.9キロで,26.5キロ異なります.大船渡線は旧東山町・旧大東町側へと大きく鍋ヅル形に迂回する線形を採っていることも「千厩経由」が長くなる一因と言えます.

 このようなこともあり,東京方面へは一ノ関からの新幹線のスピードが優位に効くことから「千厩経由」に,仙台へ行く際には距離が短く,気仙沼から快速「南三陸」等もある気仙沼線利用の「涌谷経由」が優位になるものと考えられますが,長距離の同一方面へ行く常備乗車券の経由が異なる,というのは大変興味深いです.

 細浦駅の受託者の話では,地元の新幹線利用者は一ノ関や水沢江刺まで車で行き,駅近くの駐車場に停めて新幹線に乗る人が多い,とのことでした.時刻表を見ても,大船渡線や気仙沼線は本数があまりにも少なさ過ぎます.東京方面へ行く場合,往きはいいとしても,帰りに予定の新幹線に乗り遅れようものなら,当日中に帰ってくることが出来ないような列車本数です.

 なお,細浦駅には常備新幹線自由席特急券(一ノ関〜東京と,一ノ関〜上野)もありました.(2011年3月4日記述)

 細浦駅は2011年3月11日の東日本大震災により被災し,以降,乗車券類の委託販売は中止されています.(2013年10月23日記述)




小湊鉄道線 馬立駅発行 2010年10月

小湊鉄道〜JR東日本連絡常備軟券乗車券

 千葉県の小湊鉄道線は2010年現在,DMH17系エンジンを登載するキハ200形が活躍を続ける等,古色蒼然とした雰囲気を残す私鉄ですが,有人駅では硬券乗車券の販売も残っていました.

 小湊鉄道線は五井駅でJR内房線と連絡していますが,改札分離も行われていないためか連絡運輸が一部区間で設定されています.小湊鉄道線からJR線への連絡乗車券については,常備券類はすべて軟券のようです.これはJR線の連絡区域各駅の自動改札化が進んでおり,硬券の場合の自動改札機への誤投入によるトラブルを未然に防止するための措置,という噂もありますが,真実は不明です.そのためか,小湊鉄道線内から五井駅(改札を含め,JR東日本が管理駅)ゆきの常備乗車券は軟券のようです.

 画像は小湊鉄道線馬立(うまたて)駅から蘇我駅まで(五井から190円区間)の乗車券です.連絡駅の五井は括弧書きになっています.710円はこの乗車券の総額ですから,小湊鉄道線内部分(馬立〜五井間)は520円ということになります.このように,JR線部分の運賃が一目で分かる様式だと,例えば乗り越した際にJRサイドで区変等の対応がスムーズに進む気がしますが,連絡乗車券によってはJR線内が近距離のものであっても,社線・JR線それぞれの運賃が非常に分かりづらい様式のものもあります(例:津軽鉄道).

 小児断線はなく,大人専用券です.券の通し番号(循環番号)は裏面に入っています.(2011年3月21日記述,2013年10月26日加筆修正)




福岡市交通局 姪浜駅発行 2010年10月

福岡市交通局〜JR九州連絡常備軟券乗車券

 姪浜駅は福岡市交通局の地下鉄空港線とJR九州筑肥線の接続駅となっています.駅は福岡市交通局が管理しています.

 姪浜駅の自動券売機では地下鉄各駅や貝塚接続の西鉄宮地岳線連絡,JR筑肥線近距離券の発売は行っていますが(連絡乗車券についての詳細は未確認),博多接続の連絡乗車券については設定がないため,有人窓口での常備券発売を行っています.

 姪浜駅には「定期券うりば」と書かれた窓口があり,そこで画像の乗車券を購入することができました.なお,博多連絡のJR長距離乗車券についても,例えば東京都区内ゆきや大阪市内ゆきなどが連絡運輸範囲には含まれますが,姪浜駅の「定期券うりば」では長距離口座は常備されておらず,補充券等による発券業務も行っていないようです(未確認,web情報渉猟による).

 券面ですが,接続駅の「博多」は四角囲み文字になっています.前掲の五井駅の括弧書きより一般的な感じがします.通し番号は表面に5ケタで入っていましたが,この常備券で変わっていることとして,この券番の右側に元々は出札側で集計用に保管する控え片が付いた状態となっており,それをハサミで切り落として販売していました(小児断線や準常備式に似ています).

 この券ですが,小児運賃が入っています.小児運賃で発売する場合には,この券と出札側で保管する控えの両方に「小児」のゴム印を押すことにより,発売された小児運賃枚数も分かる仕組みになっているようです.(2011年3月21日記述)




筑肥線 虹ノ松原駅発行 2010年10月

JR九州〜福岡市交通局連絡常備軟券乗車券

 前掲の姪浜駅発行の券とは逆に,JR九州線から福岡市交通局への連絡乗車券です.この券で興味深いのは発行,発売駅が簡易委託の虹ノ松原駅(筑肥線)という点です.

 JR各社の簡易委託駅で常備「連絡」乗車券を扱っている駅は極めて少ないものと思われます.この画像の常備券に押印する発行日付については,「年.月.日」だけが入ったゴム印を押せばいいかとも思いますが,次に紹介する金片と発行様式を揃えるためか,年月日の他に発行駅(発駅)も入った入鋏スタンパーを使用していました.

 小児断線はなく,完全大人券です.小児の同様の券はないようでした.(2011年10月2日記述,10月15日加筆修正)




筑肥線 虹ノ松原駅発行 2010年10月

JR九州簡易委託駅の耳付き軟券乗車券

 虹ノ松原駅の乗車券を受託販売している商店で何種類かの常備券を購入していたところ,たまたま最安の金片常備券である160円区間券1枚を耳付きで購入することができました.

 このページでも紹介したJR東日本の耳付き常備券は「耳」がB型券程度の大きさでしたが,JR九州のものは携帯端末で発券する車内補充券(レシート券)程度の大きさがありました.

 JR九州の金片は簡易委託駅のほぼどこでも流用できるよう,発駅や発行箇所を補充するタイプのものが使われており,耳の発行箇所は空欄のままでした.

 乗車券自体も発駅と発行(年)月日を入鋏スタンパーで一気に代用してしまうタイプの券で,収集欲をそそられるものではありませんが,耳付が目に入ってしまったため,購入してしまいました.(2011年10月2日記述)




釜石線 宮守駅発行(上)・奥羽本線 碇ヶ関駅発行(下) 2012年2月

釜石線宮守駅から東京都区内ゆき軟券乗車券

 釜石線宮守駅は簡易委託駅となっており,2012年3月現在,常備軟券乗車券の販売が続いています.片道101キロ以上の長距離乗車券は2種ありました.右画像の東京都区内ゆきが最遠です.

 経由は「東北線」となっています.花巻駅から東北本線(在来線)経由ということになります.宮守駅から新花巻乗換えで東北新幹線(北上方面)に乗車する経路も可能な感じがしますが,画像の花巻駅乗換えの乗車券で新花巻〜北上間の東北新幹線にそのまま乗車することは規則上は不可のはずです.

 東北本線(在来線)及び東北新幹線の北上〜盛岡間そのものはいわゆる「幹在同一視」による「選択乗車」自体は可能ですが,同区間内の駅を発駅,着駅または接続駅とする場合は,線路が異なるものとして扱います(旅客営業規則第16条の2の2).

 画像の乗車券ですが,花巻駅経由の営業キロに基づく運賃で表記されているようです.
〔宮守〜花巻(27.6キロ・換算キロ)〕+〔花巻〜東京(500.0キロ・営業キロ)〕=527.6キロで8,190円です.

 では,新花巻経由だと運賃はどうなるかと言うと,
〔宮守〜新花巻(20.6キロ・換算キロ)〕+〔新花巻〜東京(500.0キロ・営業キロ)〕=520.6キロでやはり8,190円です.例えば,新花巻駅で画像の乗車券を「新花巻・新幹線経由」に区変してもらっても,差額は発生しません.

 画像下の料補は上の乗車券と同時に実使用した新花巻から東京までの新幹線特急券です.宮守から釜石線に乗車し,釜石線の新花巻駅改札で画像の乗車券を提示しました.新花巻駅は釜石線改札と新幹線改札が遠く離れており,まるで別駅のような状態です.ここでは乗り換えというより,「途中下車」といった感じですが,画像の乗車券経路では新花巻駅で「乗り換え」はできないわけで,正当な扱いはまさに「途中下車」だったと言えます.

 新花巻駅新幹線有人改札で画像の乗車券と特急券を提示しました.区変の扱いはなく,特急券にのみ改札入鋏印を入れて入場できました.なお,宮守から東京都区内まで新花巻経由での運賃計算キロは520.6キロですから,宮守〜岩根橋(営業キロ3.4キロ・180円)と岩根橋〜東京都区内(運賃計算キロ516.9キロ・7,980円)で分割して買った方が計8,160円となり30円お得です.これよりもさらに実用面でも有用な分割は,宮守〜新花巻(営業キロ18.7キロ・320円)と新花巻〜東京都区内(営業キロ500.0キロ・7,670円)の分割購入で計7,990円となり,200円もお得です.

 蛇足ですが,画像の新幹線特急券は簡易委託駅である碇ヶ関駅(奥羽本線)で購入しました.「やまびこ」と「はやて」のラッチ内乗継を行うややこしい手書き券を発券してくださった委託職員の方に深くお礼申し上げます.(2012年3月17日記述)




釜石線 宮守駅発行 2012年2月

釜石線宮守駅から仙台ゆき軟券乗車券

 宮守駅にある長距離の普通片道乗車券は,前掲の東京都区内ゆきと右画像の「仙台・苦竹間ゆき」です.この券には経由表記がありません.「仙台・苦竹間」という行き先等から考えると,これも前掲の東京都区内ゆき同様,花巻・東北線(在来線)経由のようです.

 右画像の券も前掲の「東京都区内ゆき」も,恐らく東北新幹線新花巻駅開業(1985年3月)以前から様式の変化がないものと思われます.

 まず,花巻・東北線(在来線)経由での運賃を考察します.
〔宮守〜花巻(27.6キロ・換算キロ)〕+〔花巻〜仙台(148.2キロ・営業キロ)〕=175.8キロで2,940円.

 同額運賃帯は運賃計算キロで180キロ以下です.つまり,仙台駅から4.2キロ離れた駅までが同一運賃の範囲です.東北本線(岩沼方面)の次駅・長町は4.5キロ離れており,同一運賃帯を外れます.仙山線は仙台〜東照宮間が3.2キロで同一運賃帯ですが,開業はJR化後の1988年11月です.券面の様式は国鉄時代の「新花巻駅開業(1985年)以前」から変化がないようですから,「東照宮」という着駅表示が欠落しているようです.同様に,仙石線「あおば通」駅も開業は2000年3月ですから当然欠落です.なお,仙山線北仙台駅は仙台駅から4.8キロの距離があり,同一運賃帯に入りません.

 仙石線石巻方面で仙台から4.5キロ以内の最遠駅はというと,「苦竹」になります.それで券面は「仙台・苦竹間ゆき」という表記になっているようです.ところで,例えばこの乗車券を東照宮駅で下車時に提示した際,仙台〜東照宮間(180円)の乗り越し分を請求される可能性がありますが,発行駅が「○ム」であること等から,発駅計算による精算(つまり,差額ゼロ)が可能な気がします.これについての詳細は作者には分かりかねます.

 続いて,宮守から新花巻・東北新幹線経由での運賃考察をします.
〔宮守〜新花巻(20.6キロ・換算キロ)〕+〔新花巻〜仙台(148.2キロ・営業キロ)〕=168.8キロ(2,940円)で花巻経由と運賃は同一です.しかし,仙台以遠の「同一運賃帯最遠駅」は異なってきます.仙台から11.2キロ離れた駅までが範囲ですから,名取(東北本線),葛岡(仙山線),あおば通及び中野栄(仙石線)まで同一運賃です.ですから,この乗車券が「新花巻・新幹線経由」であるならば,「仙台・名取・葛岡・あおば通・中野栄間ゆき」という5駅が併記された乗車券になっていたかもしれません(新花巻駅が開業した1985年11月以前の様式,ということにこだわると,葛岡ではなく,「国見」になり,「あおば通」は欠落です).

 宮守駅常備の長距離乗車券はたったの2種ですが,経由について考察するだけでもとんでもない奥深さを秘めています.常備券のたまらない魅力を感じます.(2012年3月17日記述)




予讃線 鬼無駅発行 2010年2月(上)・岩泉線 岩泉駅発行 2009年7月(下)

JRの小児専用軟券乗車券2種

 JR四国鬼無駅発行のものと,JR東日本岩泉駅発行の小児専用軟券乗車券を上下に並べました.それぞれの違いとして,券そのものの大きさ(鬼無駅のものはいわゆる定期券サイズ,岩泉駅のものはA型),○ム表記の有無(鬼無駅も完全無人駅扱いで簡易委託駅ですが,なぜか○ム表記がありません),岩泉駅のものは券番が表面にないこと(裏面に入っています),小児用を表す「小」の字体がかなり異なること等が挙げられます.

 しかし,特筆すべき大きな違いとして,鬼無駅のものは「小児運賃で100円区間」という表記なのに対し,岩泉駅のものは「大人運賃で230円区間の乗車券で,小児運賃は110円」という2段表記だということが挙げられるかと思います.

 鬼無駅の小児運賃のみを乗車券面に表記する「メリット」を敢えて探すと,大人運賃200円区間(幹線4〜6キロ,小児100円)と,同210円区間(幹線7〜10キロ,小児100円)の両区間に対して,1口座の常備券でまとめられるという点がありそうです.

 もし,岩泉駅発行のもののように大人運賃の区間も表記する場合には,「鬼無→200円区間/小児100円」と,「鬼無→210円区間/小児100円」の2券種を設備する必要があるためです.

 実際,鬼無から4〜6キロ帯は香西,端岡,国分の3駅,7〜10キロ帯は高松,讃岐府中,昭和町,栗林公園北口の4駅あるので,小児専用券を1口座でまとめるメリットは大いにありそうです.

 画像の鬼無駅の券のように,100円という明らかに大人の運賃にはない区間の額であれば問題はなさそうですが,例えばこの様式でJR本州3社の幹線36〜40キロ帯(大人650円・小児320円)と16〜20キロ帯の大人(320円)の場合で画像の鬼無駅ような小児専用券があったとすると,小児運賃320円区間の券なのか(つまり大人650円区間),大人の320円区間なのか,途中区間や着駅で集改札係員が戸惑うことになりかねません.

 ところで,2010年2月に鬼無駅窓口に設備してある常備券の箱を見た限りでは,画像の「小児100円区間」以外の普通片道乗車券はすべて小児断線が入った大人小児用券となっていましたので,券面を一見しただけでは,運賃帯が大人区間なのか,小児区間なのか分かりにくい券の存在に関しては杞憂であり,どうやら前述のように大人200円区間と210円区間の小児専用券を1口座にまとめるというメリットと共に,100円というキリのいい小児専用券(鬼無駅では唯一の小児専用口座のようです)のみを設備することにより,発売時間や手間を短縮すると共に,この小児専用乗車券で乗り越した場合に着駅精算がしやすいようにしているとも考えられます.(2013年10月26日記述)




豊橋鉄道発行 2013年7月

豊橋鉄道渥美線杉山駅の軟券乗車券

 豊橋鉄道渥美線杉山駅は起点の新豊橋駅から12.7キロの位置にある完全無人駅ですが,駅前の商店で乗車券の委託販売が行われています.2013年現在,発売口座は自社線内のみです.

 右画像はもっとも安い130円区間の片道乗車券(大人券)です.発駅常備の短冊状の券のようで,券の上下にミシン目の跡があります.

 金額式で,運賃部分をゴム印で補充するタイプです.運賃部分には予めゴム印が押してあり,売店の受託者に「どこどこまでの切符を下さい」と言うとその場では年月日のゴム印のみを押して乗車券を渡されました.

 右画像下部は乗車券の裏面です.この乗車券はどこを見ても通し番号(循環番号)がありません.短冊状の金額補充式乗車券の場合,いわゆる「耳」等にだけ循環番号が入っていることがあり,乗車券にはどこにも入っていないことがあります.

 受託者は短冊状の乗車券等を鉄道会社側から買い取った時点で鉄道会社側に支払いを完了させているようで,受託者が乗車券を発売した際にいちいちどこまでの区間の乗車券が,いつ,何枚売れたのかはもはや集計する必要はないようです.

 この乗車券には小児断線があります.断線右側には発駅を示す「杉」という漢字一文字があります.しかし,断線右側の乙片に運賃の補充印等はなく,もし断線で切断して小児券として発券した場合,受託者の手元に残った乙片からは何円区間の乗車券が売れたのか,もはや分からなくなってしまいます.

 このようなことと,小児券として発売してもらった次掲のものから推測すると,小児断線は全く使われていないようです.(2013年10月26日記述)




豊橋鉄道発行 2013年9月

豊橋鉄道渥美線杉山駅の小児普通乗車券

 前掲の杉山駅前商店で最安区間の小児券と,大清水まで(160円区間)の小児券を買い求めました.画像上部は最安区間(老津,やぐま台,豊島まで)の130円区間の小児用のもので,小児運賃は半額(65円)の切り上げで70円となります.渡された券には「\70」のゴム印が押されおり,「小」の朱色袋文字等の小児券を示す表記は一切なく,単に「\70円区間」と表示されています.

 しかし,これでは「小児用の乗車券」ということがまったく分からず,「大人70円区間」の乗車券となってしまうような気がします.

 画像のように70円区間や80円区間のものであれば,大人の運賃帯にない金額なので特に混乱はなさそうですが,例えば柳生橋駅までの「大人360円区間」の小児券(180円)を買い求めた場合,券面がどうなっているのか想像が膨らみます.

 杉山駅からは大人180円区間(向ヶ丘,三河田原までの2駅)が存在していることから,恐らく「180円区間」の金額補充式常備券があるはずです.

 前述の「柳生橋駅まで」の小児券もこれで代用している可能性がありますが,柳生橋までの小児券のみ,例えば発売時に「小」のゴム印を押すかどうか等は未確認です.

 渥美線は運賃帯の設定が比較的細かく,杉山駅からの金額式口座数をカウントすると,大人運賃で130,160,180,210,240,270,300,330,360,380円区間の計10口座もあります.このうち,小児運賃と同額となるのは前述の360円区間のみですから,180円区間券を大人・小児兼用しても合計19口座もの常備券を設備しなければならないことになります.

 そういった意味からも小児断線を活用するのはメリットと言えそうですが,乙片の管理,集計の手間を考えると小児用(として使用)の金額補充式券を予め設備しておいた方が楽なのかもしれません.

 蛇足ですが,画像の2枚の券を並べると,券の幅も高さもやや異なり,70円券の方が少し大きいです.恐らく,最安の70円区間の券は趣味購入でかなりの枚数が売れているものと想像できますので,こちらの方が新しいものと思われます.(2013年10月26日記述)




ページの先頭へ戻る


アビエスリサーチ トップへ戻る

inserted by FC2 system