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お得なきっぷの買い方ガイド 〜往復乗車券

(2012年1月6日作成,2012年1月9日最終更新)

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羽越本線 村上駅発行 2006年10月

JRの往復割引乗車券 

 JR線の営業キロが片道あたり600キロを越える場合の往復普通乗車券は「往復割引普通乗車券」となり,ゆき・かえりそれぞれが1割引となります.

 かつては「かえり券が2割引になる」という制度でしたが,新下関〜博多間で山陽新幹線経由と山陽本線・鹿児島本線経由(在来線経由)での運賃差が発生したためか,「ゆき,かえりとも1割引」に制度が改められました.

 右画像は羽越本線間島駅(新潟県)から新潟〜信越本線〜北陸本線で米原を経て東海道本線の共和駅(愛知県)までの往復乗車券です.片道の営業キロは654.3kmで601キロ以上あるため,「ゆき」「かえり」それぞれが1割引(10円未満の端数は切り捨て)ですから,

641〜680キロの運賃 9,560×0.9=8,604

端数切り捨て 8,600×2(ゆき・かえり)=17,200円

ということになります.

 マルス発券の往復乗車券の場合,「ゆき券」には金額が表示されず,「かえり券」に往復の合計運賃が表示されます.

 なお,行き先を共和とせず,「名古屋市内」としても,間島〜名古屋間(経由は画像の券と同)は637.8kmで往復割引が効く上,運賃帯はワンランク安い9,350円(普通運賃)のため,往復割引で計16,820円です.名古屋市内の東海道本線東端駅である南大高〜共和間乗車券を別買い(片道140円×2(ゆき・かえり)=280円)していわゆる「分割乗車券の購入」の形にすれば,16,820+280=17,100円となり,画像の券よりも100円だけですが安くすることができます.

 実使用では名古屋駅,金山駅で途中下車をしたかったため,分割乗車券にはしていません.

 往復割引からは話題が逸れますが,「ゆき」「かえり」両券面に「大阪車掌区」の検札印があります.いずれも急行「きたぐに」車内で押されたものです.大阪と北陸地方を結ぶ昼行特急や夜行寝台特急が湖西線経由で運転されているのに対し,「きたぐに」号は山科〜敦賀間を米原経由で運転しています.そのため,名古屋圏と北陸地方を移動する際に利便性が確保されている列車と言えます.

 しかし,名古屋からの北陸方面へ行く下り列車では米原駅深夜時間帯の接続が悪く,下り最終米原ゆき普通列車と「きたぐに」の接続が1時間7分待ち(「きたぐに」の米原発車時刻は1:05),反対方向の早朝の上りも54分待ち(上り「きたぐに」の米原到着は5:20)となっており,名古屋圏と「きたぐに」の時刻上での利便性は高くはありません.しかし,「きたぐに」が夜行の移動手段として貴重な列車であることは揺るぎません.2012年3月ダイヤ改正で「きたぐに」が臨時列車化されると言います.非常に残念で仕方ありません.(2012年1月6日記述)




常磐線 土浦駅発行 1990年5月

学割利用による往復乗車券 

 学割(学生割引乗車券)は(片道あたり)101キロ以上の場合,普通運賃の2割引(10円未満の端数は切り捨て)で乗車券を購入できます.学割乗車券を購入する際には学校等が発行した学校学生生徒旅客運賃割引証(いわゆる学割証)が必要ですが,学割証は1人あたりの年間発行枚数に制限がある場合が多く,無計画に使用できないようになっています.

 普通乗車券1枚に対し1枚の学割証が必要ですが,連続乗車券と往復乗車券の場合も学割証は1枚です.そのため,往復の経路が同じ場合,学割証を節約する意味合いからも往復乗車券の購入は有効です.

 右画像は土浦から土合までの学割往復乗車券です.往復割引運賃が効く距離ではありませんが,学割による購入で2割引となっています.

 土浦〜土合間の営業キロは232.3kmで普通片道運賃は3,810円です.券面にある「\3040円」は2割引された学割運賃です.当時の印発券は前掲のマルス券と異なり,ゆき,かえりそれぞれに片道の運賃が印字されていました.

 また,かえり券も「ゆき券」と同様のレイアウトになっているため,画像では「かえり券」の使用開始駅が「土浦」,目的駅(帰着駅)が「水上・土合間」のように見えますが,当時の印発券はこのような様式で統一されていたようです.(2012年1月6日記述)




常磐線 荒川沖駅発行 1992年9月

往復割引乗車券の前途放棄(かえり券片) 

 東京(都区内)〜大阪(市内)間の営業キロは552.6kmですから,600キロ超えとならず,往復割引は適用されません.しかし,常磐線荒川沖から大阪市内は618.8kmとなるため,往復割引が適用されます.

 右画像の左側の券は荒川沖から大阪市内までの往復乗車券の「かえり券」です.茨城県つくば市(つくばセンター)と東京駅(八重洲南口)との間には高速バス「つくば号」が運転されていますが,特に上り(つくばセンター発東京ゆき)は三郷料金所や首都高速で渋滞に巻き込まれることが多く,到着の遅延確率が高く,また,東京駅からは乗車予定の新幹線等に乗り遅れる可能性が大いにあることからあまり利用されません.

 逆に下りの「つくば号」は東京駅から必ず着席できること,上りに比較して渋滞にハマることが少ないこと,つくばで他の公共交通機関に「乗り換え」することが(ほぼ)皆無であることから,到着時刻が遅れても影響がほとんどなく,特につくば市在住者には頻繁に使われています(いました).

 また,1992年当時の荒川沖駅からつくば市へ向かう路線バス(関鉄バス)は運賃が高い上,つくば市とは線路を挟んで反対側になる荒川沖駅西口から発車し,途中停留所で迂回する箇所がある等,時間,運賃面でも不便でした.そのようなこともあり,つくば市と東京方面を往復する場合は,「行きは時間が正確な常磐線,帰りは高速バス利用」というつくば市在住者が多数居ました.

 画像の「かえり券」は券面に「東京」の下車印こそありませんが,東京駅で途中下車し,東京〜荒川沖間は「前途放棄」したものです.東京からは前述のように高速バスを利用しています.

 以下はJRの実乗車部分を購入した場合と,往復割引乗車券を購入した場合の運賃比較です(運賃は1992年当時).

実乗車部分の乗車券購入:荒川沖〜大阪市内 9,170円(618.8キロ)+大阪市内〜東京都区内8,340円(556.4km)=17,510円

 なお,画像の券面にある「\7330円」は当時の往復割引運賃のルールである「かえり券を2割引」した額です.よって荒川沖〜大阪市内の往復割引運賃は,9,170(ゆき)+7,330(かえり)=16,500円 です.

 往復割引の場合,「実乗車区間」のみを普通片道運賃による2枚の乗車券で購入した場合よりも1,010円安くなります.トータルでの「損得計算」は,高速バス「つくば号」の(回数券1回分の)運賃(約1,000円)や,荒川沖からつくば市の自宅最寄バス停までの路線バス運賃(約350円)等を合計していった比較ということになります.

 右画像の右側の券は往復割引にさらに「学割」を効かせたものです.往復割引と学割は併用割引が可能です.端数の計算は,普通運賃から往復割引(2012年現在は1割引)計算を行い,10円未満の端数を一度切り捨て,その額にさらに学割の2割引を行って10円未満の端数は切り捨て,という計算を行います.つまり,2回の「端数の切り捨て」が行われます.国鉄時代の「端数切り捨て」ルールは旅客サイドに有利なルールを適用している場合がほとんどで,公共交通機関としての「使命」のようなものを感じます.

 なお,画像券面の「かえり」の部分には青と赤という色の違いこそありますが,「かえり」券であることを強調する丸囲みがされています.前掲の土浦〜土合の往復乗車券の項でも触れましたが,当時の印発券の往復乗車券の「かえり券」の様式は使用開始駅と目的駅の順序がまぎらわしく,一見すると目的駅が「使用開始駅」のように見えることから,「かえり券」であることを改札担当職員らに強くアピールするためか,発券した出札担当がこのような丸囲みを書き込むことが行われていたようです.

 蛇足ですが,2005年につくばエクスプレス(首都圏新都市鉄道・秋葉原〜つくば間)が開業したことにより,つくば市〜東京方面の移動は劇的に変化し,「行きはつくばエクスプレス,帰りは高速バス」や,「行き帰りともつくばエクスプレス」といったパターンが極めて多くなり,常磐線を利用することは激減しました.(2012年1月6日記述)

常磐線 荒川沖駅発行 1990年2月

 前述の荒川沖〜大阪市内の「かえり券」に東京駅の下車印の入ったものが見つかりました.「海東京」,つまり,JR東海東京駅改札(東海道新幹線)の下車印です.

 券面レイアウト等は前掲のものと同一ですが,ハサミによる入鋏痕等,時代がやや遡った感を受けます.券面の「かえり」部分に色鉛筆による囲みはありません.(2012年1月11日加筆修正)




常磐線 土浦駅発行 1990年5月

往復割引乗車券の前途放棄(ゆき券片) 

 前掲の荒川沖〜大阪市内往復の「ゆき」券です.「ゆき」券には荒川沖〜大阪市内の無割引普通片道運賃である「\9170円」が印字されています.

 券面に「京都」の下車印があります.京都〜大阪市内間については前途放棄したため,券が手元に残っています.この時の旅行での「かえり」券は手元に残っていません.「かえり」券は京都で使用を開始し,前項のように東京で途中下車はせず,そのまま荒川沖まで戻って改札で回収されたためです.

 つまり,旅行自体は荒川沖〜京都(市内)間の往復でした.実乗車区間の往復乗車券を購入すると,同区間の営業キロは576.6kmですから,運賃(1990年当時)は8,550円×2(ゆき・かえり)=17,100円です.

 しかし,実購入では行き先を「京都市内」とせず,600キロを越える区間までとして「往復割引」運賃を適用させています.荒川沖〜大阪(市内)間は618.8キロですから,往復割引運賃16,500円で,実乗車区間の往復乗車券を買うより600円お得です.

 以上のように,営業キロで541キロ以上600キロ以下の区間を往復する場合は,営業キロ601〜640キロ区間の往復乗車券を購入し,前途放棄等の一部区間を放棄して実使用した方が安くなります.

 ところで,なぜ「往復割引」が適用されるのが「601キロ以上」なのかを考えると,利用客が非常に多い東京(都区内)〜大阪(市内)間の営業キロが556.4キロのため,この区間については往復割引は適用させまいと国鉄側が画策したから,と作者は考えます.561キロ以上は往復割引を適用,でもよかったのかもしれませんが,キリよく601キロ以上に適用した思われます.

 しかし,前述のように営業キロ541キロ以上あれば,601〜640キロの営業キロ区間まで行き先を伸ばして往復割引乗車券を買った方がお得です.非常に有名な節約テクニックですが,東京〜大阪間の旅行では東京〜西明石(営業キロ612.3キロ)の往復乗車券を買った方が往復で200円ですがお得になります.

 蛇足ですが,東京からの往復旅行先が例えば「天王寺」の場合,東京都区内〜西明石の乗車券では大阪〜天王寺の乗車券(JR線で片道190円)が別途必要です(別途は京橋〜天王寺間でもいいのではないか?という意見もあるかと思いますが,それでも片道170円が別途必要です).行き先によっては着駅「大阪市内」とした方がお得な場合もありますので,事前によく計画を練って実購入することをお勧めします.(2012年1月6日記述)




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