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お得なきっぷの買い方ガイド 〜周遊きっぷ
(2013年3月31日発売終了)

(2012年1月11日作成,2013年5月30日最終更新)

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羽越本線 村上駅発行 2004年1月

「周遊きっぷ」はお得なのか? 

 国鉄時代からの「ワイド・ミニ・ニューワイド周遊券」「一般・グリーン周遊券」はJR発足から11年経った1998年3月に全廃され,新たに「周遊きっぷ」が発売されました.(2013年3月31日を以って「周遊きっぷ」は発売終了となりました.)

 「周遊きっぷ」の細かいルールは省きますが,JTB時刻表(2011年10月号)の「周遊きっぷ」の項の内容の一部を引用(一部中略)すると,

・「周遊きっぷは目的地の周遊エリアをカバーする[ゾーン券]に,[ゆき券]と[かえり券]をセットにしたセミ・オーダーメイドのきっぷです.
・「周遊ゾーンとの往復にJR線を営業キロで片道201キロ以上ご利用の場合に発売します.

 とあります.

 価格は「ゆき券」「かえり券」が通常の片道乗車券の2割引(学割は3割引)です.但し,経由に東海道新幹線が絡む場合の例外があります.

・ご利用区間に東海道新幹線(東京−新大阪間)を一部または全区間ご利用の場合で,[ゆき券]・[かえり券]のJR線の営業キロが片道201キロから600キロまでの場合は,[ゆき券][かえり券]のねだんはそれぞれの区間・経路による所定運賃の5%引(学割は20%引)となります.なお,ご利用区間に東海道新幹線(東京−新大阪間)を一部または全区間ご利用の場合で,営業キロが片道601キロ以上ご乗車の場合は,ほかの線区と同様に所定運賃の20%引(学割は30%引)となります.

 周遊きっぷのメリットは,学割を効かせなくともゆき・かえり券ともに例外を除いて2割引となること,ゆき・かえり券の経路は普通片道乗車券として満たしていれば自由に組めること,発駅が原則,どこでも良いことと思います.

 右画像の券は福井を発駅とした「北近畿ゾーン」の周遊きっぷ一式です.一番上が「ゆき券」,中間が「ゾーン券」,一番下が「かえり券」です.福井〜篠山口間の営業キロは257.0kmですから,片道201キロ以上をクリアしています.往復普通乗車券で割引(往復割引)が発生するのが片道601キロ以上で1割引ですから,257.0kmで2割引は大きいと言えます.

 問題はゾーン券の価格です.5日間有効で「北近畿ゾーン」は4,800円です.ゾーン券の「5日間」は旅行で利用するにはありまりにも中途半端な日数です.広いゾーン,例えば北海道ゾーンや九州ゾーンでは8〜10日程度は欲しいところですし(北海道ゾーンは2002年10月に10日間用も新設された),週末や3連休程度しか休めないサラリーマンにとっては逆に5日間は長すぎます.

 また,ゾーンのエリアも問題です.この「北近畿ゾーン」の場合,福知山線南端が篠山口,山陰本線南端が園部ではあまりにも中途半端です.それぞれ大阪,京都までがゾーンでないと,使いにくくて仕方ありません.画像券の場合,「ゆき」も「かえり」も福知山線の特急を使った場合,大阪(あるいは新大阪)〜篠山口間は別途自由席特急券を買わなければいけません.

 この「ゾーンの中途半端さ」は,後述するように,周遊きっぷのゾーン券を「通勤的利用」に流用されないようにするためのJR側の自衛策でもあるようです.

 本項のタイトル「周遊きっぷはお得か?」の答えは,人それぞれ,旅行の仕方それぞれと言うしかありません.作者の場合,当然のことですが「周遊きっぷ」で計画した旅程を順調にこなした際に「モトは取れるのか?」で購入するかの決断をしています.実際の旅行では予定外の回りたい箇所が発生したり,撮りたい列車が突如発生したり,あるいはその逆だったりします.ゾーン内では特急自由席に乗れることが大きなメリットになる場合もあり,周遊きっぷは一概に「モトが取れるかどうか」だけでは判断できない要素もあることは事実です.(2012年1月11日記述,2013年5月27日加筆修正)




羽越本線 村上駅発行 2007年1月

周遊地(ゾーン)までの往復で急行自由席が使えなくなった「周遊きっぷ」 

 1998年に発売された「周遊きっぷ」以前の「ワイド・ミニ・ニューワイド周遊券」では自由周遊区間までの往復に急行自由席に乗車可能でした.国鉄時代には多くの長距離昼行,夜行急行が運転されており,周遊券を手に長い往復の旅路を急行の座席車で移動した思い出が多くの書籍やwebサイトで語られています.

 しかし,「周遊きっぷ」となってからは,周遊ゾーンまでの「ゆき」「かえり」に急行自由席が追加料金なしで利用できるルールは消滅しました.1998年当時,すでに急行列車そのものが激減していましたが,1999年から新潟県に住んでいた作者としては,大阪方面へ夜行の急行「きたぐに」が運転されていたことから,この急行自由席にそのまま乗車できるルールが消滅したことはかなり痛手でした.

 右画像の券は出発駅が羽越本線の間島で,京都を入口・出口駅とした京阪神ゾーンの周遊きっぷです.前述の急行「きたぐに」自由席にそのまま乗れれば非常にありがたいのですが,新潟〜大阪間を「きたぐに」自由席で移動する場合であっても別途新潟〜京都間の急行券(1,260円)が必要となります.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2003年5月

周遊きっぷ「東京ゾーン」(2013年3月31日発売終了) 

 「東京ゾーン」は電車特定区間とほぼ一致します.1998年の発売当初は東北新幹線の東京〜大宮間もゾーンに含まれていましたが,2002年12月から外され,4,520円が4,000円に値下げされました.

 右画像の券は新潟県の間島駅から大宮駅をゾーン出入り口駅として設定した周遊きっぷです.ゆき,かえりとも経由は羽越・信越・上越・高崎線(かえりは逆順)となっています.2004年11月26日までは新発田〜新津間は豊栄経由(白新線経由),水原経由(羽越本線経由)いずれを乗車しても,距離の短い水原経由(羽越・信越線経由)の乗車券で乗車可能でした(旅客営業規則第157条(選択乗車)).

 東京ゾーンは特に東京圏の通勤的利用に使える応用テクニックが存在します.ゆき,かえりともに片道201キロをギリギリで超える駅(例えば篠ノ井線線西条(松本経由),信越本線豊野(長野経由),東海道本線蒲原や上越線八色)を発駅とした東京ゾーンの周遊券を発券してもらい,ゾーン券そのものを日常の通勤的利用します.

 幹線201〜220キロ帯の普通運賃は3,570円ですから,それの2割引(10円未満の端数は切り捨て)で2,850円,ゆき・かえりで5,700円です.

 東京ゾーンの4,000円との合計額は9,700円です.ゾーン券は5日間有効ですから,1日あたり1940円分の乗車をすればモトが取れます.片道あたり970円です.電車特定区間であれば64〜70キロ(1,050円の運賃帯)です.例えば,千葉〜横浜(70.9キロ)の通勤的利用で一応モトは取れますが,ゾーン券は特急自由席に乗車可能です.東京駅京葉ホームからの乗換が問題ですが,千葉から蘇我へ出て,特急「さざなみ2号」(蘇我6:26発)の利用もできます.

 誉田駅等からの通勤的利用も有利です.誉田はゾーン外ですが,別途,誉田〜蘇我間(190円)の回数券を購入しておき,蘇我からはゾーン券で前述の特急「さざなみ2号」利用であれば,東京駅までの通勤的利用で充分モトが取れます.

 ゾーンの「ゆき・かえり券」(以下まとめてアプローチ券と表記)を信州の高原からの駅からにしておき,ゾーン券の有効期間を月曜〜金曜の5日間とすれば,完全週休二日制の人はメリットが大きいです.毎週連続して同じ区間(例えば豊野を発駅としたもの)の「周遊きっぷ・東京ゾーン」を買えば,平日は「さざなみ」で通勤的利用,週末は信州の高原に「かえり券」で訪れ,自宅へは次の周遊きっぷの「ゆき券」で戻る,ということも可能です.

 1ヶ月単位程度で発駅をあちこち変え,1月は豊野,2月は蒲原,3月は八色・・・といったように「変化」をつけて週末の旅行を楽しむこともできますし,そもそもアプローチ券は使わずに放棄しても「モト」はすでに取れています.

 このような通勤的利用で気をつけたい点は,「周遊きっぷは発売箇所が周遊ゾーン内にある周遊きっぷは発売できません」(JTB時刻表,2011年10月号より,一部中略)ということです.つまり,例えば東京圏では「東京ゾーン」の周遊きっぷは不売です.そのため,遠方へ出掛けた際に1ヶ月程度先までの分をまとめて買うか,遠方の親戚や友人(鉄道マニアが望ましい)に買って送ってもらう等の手間,費用が余計にかかります.

 また,通勤定期との比較も重要です.ちなみに千葉〜横浜間の通勤1ヶ月定期は30,450円です.

 なお,周遊きっぷの払戻しは全券片未使用の場合はもちろん,「ゆき券」のみ使用後の場合に「ゾーン券とかえり券」の払戻しが可ですし,「ゆき券」「ゾーン券」のみ使用後に「かえり券」を払戻すことも可能なようです(アプローチ券については未使用の残区間も含めて払戻すこともできるようですが,詳細は分かりかねます).払戻しの細かいルールや手数料については大型の時刻表にも掲載されていませんが,購入当初から「かえり券」を払戻すつもりでゾーン券の「通勤的利用」をすることも可能ではあります.(2012年1月11日記述,6月10日加筆修正)




羽越本線 村上駅発行 2005年3月

「東京ゾーン」のエリア 

 右画像は周遊きっぷ「東京ゾーン」のゾーン券です.前掲の2003年発行のものと地図が一箇所異なります.東京モノレールの終点が前掲の券は「羽田空港」ですが,右の2005年のものは「羽空第2」となっています.

 2002年12月に東京〜大宮間の新幹線が東京ゾーンから外され,520円値下げしたことは前項に書きました.大宮以北から新幹線で東京ゾーンへアプローチする場合,大宮で新幹線を降りずに上野・東京まで乗車する場合は,大宮以南の区間も含んだ乗車券(201キロ以上のため,必然的に東京都区内着となる)が必要なので注意が必要です.

 このように,大宮以北から新幹線でアプローチする旅客にとっては大宮〜東京間の新幹線が周遊ゾーンから外されたのは大変に不便ですが,ゾーン券に新幹線を含ませると,前項のようなゾーン券を新幹線通勤的・通学的利用されることがあるようです.そのため,東京ゾーン以外でも新幹線のみゾーンから除外する措置が多数見られました.

 東京ゾーンはJR線に比して運賃の高い,りんかい線や東京モノレールを利用する場合には便利かもしれませんが,東京へビジネス目的で訪れるにはエリアが広すぎ,中途半端な感があります.東京圏への旅行であれば,例えばびゅうプラザの往復新幹線とホテル(宿泊)がパックになった「TYO」のような旅行パックの方がお得度が明らかに高い気がします.

びゅうプラザ 村上店発行 2007年2月

 蛇足ですが,TYOの「都区内フリー乗車票」はいただけません.右の画像はびゅうプラザ村上(新潟県)で購入した旅行パックの「都区内フリー乗車票」です.この乗車票はオプションで,730円の追加が必要です(パックによって設定の有無等,違いがあります).券面地図の葛西臨海公園が馬喰町か亀戸あたりにあるように見えますが,図で東京から右下に伸びた京葉線の駅です.

 東京都区内がフリーエリアですが,これもなんとも中途半端です.これで「400円」程度であれば,モトが取れそうだと追加してもいいところですが,730円ということは,160円区間を4回乗ってやっとモトが取れるといったところです.「160円」をキーワードとして思い浮かぶのは,東京メトロの初乗り運賃です.都内の移動であれば,東京メトロが便利な場合もありますから,JRで縛られるのはいかがなものかと思います.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2005年2月

周遊きっぷ「田沢湖・十和田湖ゾーン」(2010年4月1日発売終了) 

 作者の購入回数が最も多い周遊ゾーンがこの「田沢湖・十和田湖ゾーン」でしたが,惜しくも2010年3月で発売終了となってしまいました.この周遊ゾーンの良かった点は,少なくとも作者が旅行等で良く利用する部分とは無縁の路線が除外され,それに伴って値下げされたことです.

 当初は右画像のゾーンに北上〜盛岡間の新幹線とJRバス東北の十和田南〜十和田湖間を含んで5,020円でしたが,2002年12月の新幹線八戸開業のタイミングで新幹線が除外(他に盛岡〜好摩間がJRからIGRいわて銀河鉄道(以下,IGR線と記述)に変わった)され,2003年4月からバス路線がなくなり右画像の3,370円に値下げされました.

 作者の想像の域を出ませんが,レンタカーやツアーバス,定期観光バスの発達した現在では,周遊きっぷで観光地(周遊地)への綿密な行動スケジュールを立てて旅行する人はほとんどいないと思います.周遊きっぷでゾーン内のバス路線を利用すると,通常の運賃支払い時にゾーン券面を確認され,バス運賃収受担当職員(ほとんどの場合,運転士)が券面の発券番号をメモしていたことがあります.恐らく,JR側へ運賃の分配金を受け取る根拠とするものと思われます.別の見方をすれば,いつ,どこで発券された周遊券が,いつ,どこのバス路線で使われたかが資料として残っていたはずです.恐らくですが,ほとんど利用実績のなかったバス路線はゾーンから外されていったものと推測します.

 田沢湖・十和田湖ゾーンでは相次ぐ値下げで3,370円まで下がりましたが,秋田新幹線が使えることと,IGR線(盛岡〜好摩)が含まれることは作者としては非常に大きなことでした.作者の2002〜2007年の村上市在住中,盛岡や滝沢へ出張で行くことが年に何度かあり,その際に「田沢湖・十和田湖ゾーン」は重宝しました.

 右画像のアプローチ券は発駅が岩船町です.経由は羽越本線でゾーン入口・出口駅は秋田です.村上発も岩船町発も秋田まで同運賃のため,途中下車で「かえり券」を手元に残す意味からも発駅を岩船町にしてあります.

 盛岡駅近くで13時から会議がある,とします.村上から盛岡まで,羽越本線の特急「いなほ」で秋田へ出て,秋田新幹線に乗り換えるルートが鉄道では最短と思われます.

 ダイヤ(2011年3月改正)は以下のとおりです.特急「いなほ」の下り朝一番の列車は村上9:25発の「いなほ1号」です.12:11秋田着/秋田12:58「こまち28号」-14:39盛岡着で会議にはまったく間に合いません.

 朝一の「いなほ」の発車時刻が遅すぎます.そこで普通列車で北上するプランを立てます.村上7:30-823D-9:30酒田/酒田9:38-539M-11:31秋田/秋田12:01「こまち26号」-13:39盛岡.やはり盛岡13時の会議には間に合いません.

 盛岡13時に間に合わせるには,村上から新潟へ出て,新幹線で大宮を回っていくしかありません.村上7:01「いなほ2号」-7:49新潟/新潟8:22「MAXとき310号」-10:02大宮/大宮10:22「はやて21号」-12:22盛岡着で余裕で間に合います.大宮回りで乗車券,新幹線特急券代は非常にかかりますが,新幹線のスピードはすごいものです.

 実際の旅行では村上3:20発の寝台特急「あけぼの」を多用しました.もちろん「ゴロンとシート」が取れれば「ゴロンとシート」に乗って秋田回りで旅行しました.なお,2005年当時も多少のダイヤの違いこそあれ,「あけぼの」を利用する以外は新幹線で大宮回りをしないと盛岡に13時までには到着できませんでした.

 盛岡ではなく,同様に滝沢への出張もありました.滝沢への出張はたいてい2日連続で会議があったことと,宿泊地は盛岡駅近くだったこともあり,盛岡〜滝沢間のIGR線を最低でも2往復することになります.当時の盛岡〜滝沢間運賃は360円でしたから,2往復で1,440円です.その他,ゾーン内では秋田〜盛岡間の秋田新幹線や,男鹿線,花輪線にも足を伸ばしたりしていましたから,すぐにモトは取れました.

 また,村上(あるいは岩船町)〜秋田間は営業キロ201-220キロの運賃帯で,アプローチ券の片道201キロ以上をギリギリでクリアしており,秋田を入口・出口駅としたアプローチ券はその「お得度」も大変に高いものでした.「田沢湖・十和田湖ゾーン」の発売終了は残念でなりません.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2006年12月

周遊きっぷの通勤的利用例 

 右の画像は周遊きっぷ「田沢湖・十和田湖ゾーン」のゾーン券です.このゾーンは2010年3月に発売終了となってしまい,2012年現在,既に利用はできませんが,ゾーン券を利用した通勤的・通学的利用例として他のゾーンでも応用は可能です.

 田沢湖駅以西の秋田県側からは盛岡まで専門学校等に越境通学している人が存在します.ここでは角館〜盛岡の区間に絞って考えます.田沢湖線の普通列車は雫石〜田沢湖間の本数が極めて少なく,特に赤渕〜田沢湖間のいわゆる峠越え(越境)区間は1日4往復のみです.一方,いわゆる秋田新幹線「こまち」号の本数は多く,定期運転の列車だけでも1日15往復(2011年3月改正時点)もあります.

 田沢湖ゾーン券では秋田新幹線の立席乗車が可能でした.盛岡から秋田方面への帰宅の際における普通列車の不便さは群を抜いており,盛岡14:10〜16:01角館,盛岡18:05〜19:27角館(普通では最終列車)が利用可能で,盛岡16:03発の田沢湖ゆきも田沢湖で大曲ゆき接続列車はありますが,1時間17分待ちで,盛岡〜角館間の所要時間は2時間27分もかかり,実用的ではありません(時刻はいずれも2011年3月改正時点).このようなことからも,秋田新幹線が利用できれば激烈に便利です.そこで,田沢湖・十和田湖ゾーンの「通学的利用」がお得です.

 なお,かつて「田沢湖・十和田湖ゾーン」には北上〜盛岡間の東北新幹線もエリアに含まれていましたが,2002年12月から除外されました.除外後の花巻〜新花巻間の釜石線エリアはなんとも不自然な形で残りました.推測の域を出ませんが,北上〜盛岡間新幹線を通勤・通学的利用で購入する事例があり,当該区間のフレックス系新幹線定期券の売り上げに響いたことから除外した可能性もあると考えます

 北上〜盛岡間を例としてみると,FREX運賃(1ヶ月)は52,800円(同FREXパルは41,300円),アプローチ券を最安とした田沢湖・十和田湖ゾーン周遊きっぷは,2,850円(ゆき券)+4,500円(同区間の新幹線がエリアに含まれていた時代の価格)+2,850円(かえり券)=10,200円です.通学的利用(学生)であれば「FREXパル」の方がお得ですが,通勤的利用であれば周遊きっぷの方に分があります.アプローチ券の出発駅を東福島〜桑折間にして,ゾーン入口駅を北上とする設定であれば,アプローチ券を乗車券代わりに週末は仙台へ出かけることも可能でした(自由席利用であれば,北上〜仙台間の幹自特でOK).

 ただし,東京ゾーンの項でも記述したように,ゾーン内では当該ゾーンの周遊きっぷは不売ですから,ゾーン券を通勤・通学的利用するためには遠方のへ旅行へ行った際に買うか,遠方の親戚や友人(鉄道マニアが望ましい)に購入,送付を依頼する必要があります.(2012年現在,田沢湖・十和田湖ゾーンは発売終了となっていますので,この記述を参考にした通勤・通学的利用は不可です)(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 1990年5月

発券に時間がかかる周遊きっぷ 

 周遊きっぷは(ほとんどの場合)マルス端末で発券することになりますが,一件操作による発券となり,ゆき券の発駅,使用開始日,経路の他,かえり券の経路がゆき券と異なる場合はその経路,使用開始日などを一つ一つ入力していかなければならず,発券までに時間がかかることがほとんどです.

 周遊きっぷを発券してもらうためには,周遊きっぷの基本的なルールを購入者側が知っておいた方が無難です.

 右画像の券は間島を出発駅とした田沢湖・十和田湖ゾーンの周遊きっぷですが,ゆき・かえりで経路が異なります.かえり券は盛岡を出口駅として,大宮回りで間島まで戻っています.

 この周遊券を発券してもらう際,経路のメモを用意して行きました.かえり券は盛岡から新幹線経由と書いたものを渡しましたが,出札窓口職員は「これなら北上を出口駅とするのでいいですね」との回答だった.2008年にはすでに盛岡〜北上間の新幹線はゾーン券のエリアから除外されており,盛岡から(まで)新幹線を利用して出口(入口)駅とする場合は,アプローチ券に北上〜盛岡間も含ませなければならなくなりましたので,違うのではないか?と言ったところ,出札担当職員が手にしていた窓口備え付けの周遊きっぷ一覧が載った下敷状のエリア図が古いままで,北上〜盛岡間の新幹線もエリアに含まれたままでした.

 周遊きっぷの発券には1時間前後かかることもしばしばでした.周遊きっぷの通勤的利用の項等で,遠方で買ってもらう際の友人等は「鉄道マニアが望ましい」と書いたのは,ある程度,乗車券の経路や有効期間等に知識のある人物が購入した方が購入ミスが防げるという観点からです.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 1990年5月

周遊きっぷの有効期間 

 発券ミスでもっとも多いのが,ゾーン券の開始日を誤ったまま発券されることでした.[ゾーン券]の使用開始日は[ゆき券]の有効期間内で,[かえり券]の使用開始日は[ゾーン券]の有効期間内でそれぞれ指定(JTB時刻表,2011年10月号より引用)できます.

 右の画像は田沢湖・十和田湖ゾーンの周遊きっぷです.出札に提示したメモにはゾーン券使用開始日を12月7日からと書いたのですが,ゆき券と同じ12月6日で発券され,それを駅名小印を用いて有効期間を修正してあります.

 マルスの一件操作では,周遊きっぷのゾーン券有効期間開始日がゆき券の有効開始日と自動で揃う仕様になっているようで,ゾーン券の有効開始日がゆき券と異なる場合はそれを手入力しなければなりません.それを忘れる出札担当職員は多発します.

 中には,「ゾーン券の使用開始日は,ゆき券の開始日と同じでなければなりません」と言い出す職員もいるほどです.前項のように,周遊きっぷを発券してもらうには,ある程度の周遊きっぷや乗車券等に関する知識がないと希望の「周遊きっぷ」を発券してもらえない事態になります.ここがセミオーダーメイドタイプの周遊きっぷの面倒な点でもあります.

 周遊きっぷ各券の有効期間開始日チェックは重要です.誤ったまま発券され,会計の段階でそれを指摘し,再度最初から打ち直して発券,ということが何回あったか分かりません.とにかく周遊きっぷの発券は時間が非常にかかります.(2012年1月11日記述)




信越本線 新潟駅発行 2000年11月

周遊きっぷ「福岡ゾーン」(2013年3月31日発売終了) 

 右画像の券は2000年のものですが,2012年現在,一部バス路線がエリアから除外されています.価格は当初から変わらず,4,500円のままです.

 アプローチ券はゆきの経由が日本海縦貫線〜東海道・山陽本線ですが,帰りは山陰本線の支線以外の全線を走破し,京都から日本海縦貫線を北上する経由です.新潟から福岡であれば航空機利用も視野に入れるべきです.

 福岡ゾーンは片道の航空機利用も可能な設定とはなっていますが,アプローチ券での往復も楽しい旅行の一環と作者は考えますので,合計26,070円という大きな出費(それに特急券や急行券等の出費が更に加わる)ではありますが,全行程鉄道での移動としてあります.

 東京,名古屋,大阪といった大都市には,千歳空港往復や福岡空港往復の航空機利用とホテル宿泊等がセットになった格安旅行パックが存在しますが,新潟市ですとそういった旅行パックが貧弱です.そういった観点からも「周遊きっぷ」はありがたい存在と作者は考えます.

 かつて十和田湖観光は周遊旅行の「定番」でした.このページでも登場させた「田沢湖・十和田湖ゾーン」から十和田湖駅までのバス路線がエリアから除外され,さらに「田沢湖・十和田湖ゾーン」そのものも発売終了となったことを考えると,もはや鉄道と周遊きっぷで観光地を巡る時代ではないのかもしれません.

 前述のような航空機利用のパック旅行とレンタカー利用などのスタイルに移行しているとも思われます.周遊きっぷが今後どうなっていくのか,作者は注目しています.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2002年12月

周遊きっぷ「岡山・倉敷ゾーン」(2012年4月1日発売終了) 

 2012年現在の岡山・倉敷ゾーンのエリアと右画像のエリアはバス路線がかなり異なっており,価格も4,600円に値下げされています.また,2003年4月からは岡山電気軌道の全線がエリアに含まれたことは特筆されます.

 このエリアの欠点は普通列車の運転本数が非常に少ない中国山地の路線が多いことです.当時は岡山〜津山間に急行「つやま」が運転されていたため,「つやま」に乗りまくってゾーン券のモトを取ることは容易でしたが,作者にとってはあまり使い易いゾーンとは思えません.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2003年2月

周遊きっぷ「下関・北九州ゾーン」(2012年4月1日発売終了) 

 下関・北九州ゾーンは発売当初からエリアも価格も変化がない数少ない周遊きっぷの一つです.エリアがJR西日本とJR九州の旅客鉄道2社に完全に跨っている珍しいゾーンです.かつては「青函ゾーン」がJR東日本とJR北海道の2社に跨っていましたが,2012年現在はこの「下関・北九州ゾーン」が唯一となっています.

 ゆき券とゾーン券の使用開始日はすでに4日のズレがあり,ゆき券からすでに旅行を楽しみながら使用しています.アプローチ券にはいずれも大阪車掌区の検札印がありますが,定番の急行「きたぐに」自由席利用で押印されたものです.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2003年9月

周遊きっぷ「山陰ゾーン」(2012年4月1日発売終了) 

 山陰ゾーンは作者にとっては乗りもしないバス路線が魚骨状に入ったエリアを持っており,ゾーン券価格も5,300円と高めです.しかし,発売当初からエリア,価格とも変動がなく,意外と人気のある周遊ゾーンなのかもしれません.

 木次線は木次までがエリアですが,木次駅は入口・出口駅に設定されていません.これは木次線備後落合〜木次間の列車本数が少なすぎて利用者がほとんどいないことが予想されたためと思われます.

 ゆき券の経由は山陽本線から播但線,山陰本線です.大阪から特急「はまかぜ」に乗車したのですが,「はまかぜ」で尼崎以遠(大阪方面)〜和田山以遠(城崎温泉方面)の各駅相互間を途中下車しないで直通乗車する場合は,福知山線経由で運賃・料金を計算します(旅客営業取扱基準規程第110条).周遊きっぷを購入する際に,ゆき券の経路は「東海・福知山・山陰」でよかったものを,わざわざ「はまかぜ」の経路である「東海・山陽・播但・山陰」で発券依頼してしまいました.改めて差額計算はしていませんが,福知山線経由であればゆき券は1万円を切っていたものと思われます.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2005年1月

周遊きっぷ「近江路ゾーン」(2012年4月1日発売終了) 

 近江路ゾーンは2005年4月から一部バス路線がエリア落ちし,3,800円に値下げされています.敦賀〜京都間がゾーンに含まれることから,例えば京都へ行く場合,作者のように日本海側(北陸・信越線側)からアプローチする際には入口・出口駅を敦賀とすることで,敦賀以南の乗車券・自由席特急券類が不要になるというメリットがありました.

 このような「日本海側出発メリット」は田沢湖・十和田湖ゾーンも同様で,秋田を入口・出口駅とすることでゾーン券の秋田新幹線の利用ができたことは価格面からも大きな要素でした.(2012年1月11日記述)




羽越本線 村上駅発行 2002年10月

周遊きっぷ「青森・十和田ゾーン」(2004年1月27日発売終了)その1

 東北新幹線八戸開業が2002年12月でした.その直前に,第3セクター転換となる東北本線盛岡〜八戸間等へ訪問した際に利用したのが,「青森・十和田ゾーン」でした.ゾーン券のエリアは,青森県内のJR東日本線のうち,五能線と八戸線以外はすべて網羅しており,特に特急本数の多い東北本線・奥羽本線がカバーされていたため,重宝しました.

 田沢湖・十和田湖ゾーンでは田沢「湖」と名称を揃えるためか,十和田「湖」でしたが,こちらは「湖」は入らず,「十和田」だけなのが興味深い点です.

 ゾーン券のエリア地図はおおまかに言って北が右側を向いたもので,時刻表の索引地図っぽさがありました.十和田湖周辺の周遊は戦後の定番地だったこともあってか,バス路線エリアは充実していました.

 また,エリアにある二戸駅〜荒屋新町駅間のJRバス東北二戸線も岩手県の魅力に取り憑かれた作者としては一度は乗ってみたかったバス路線でしたが,浄法寺〜荒屋新町間は区間廃止されてしまいました.

 今になってみると,「行ってみたかった,乗ってみたかった」という場所,路線は枚挙に暇がありませんが,当時のこのゾーンエリアを考えても,特急「はつかり」や,ほとんどが50系客車で運転されていた快速「海峡」は最後のカウントダウン状態,花輪線のキハ58,52も予断を許さない状況という中,限られた休暇でバス路線も,という余裕はなかったことも事実でした.(2012年1月12日記述)




羽越本線 村上駅発行 2003年2月

周遊きっぷ「青森・十和田ゾーン」(2004年1月27日発売終了)その2

 「青森」十和田ゾーン」は2002年12月の東北新幹線八戸開業時にエリアが一部変わり,ゾーン券価格も200円値上げされました.なお,同ゾーンは2004年1月に発売終了しました.

 右画像は2003年の「青森・十和田ゾーン」周遊きっぷです.ゾーンのエリア地図ですが,前掲のものと比べると,おおまかに言って北が真上を向くものにデザインが変更となっています.盛岡〜二戸間のJR線は東北新幹線だけとなり,平行在来線となったIGR岩手銀河鉄道線は盛岡〜二戸間が利用可能でした.

 詳細な計算結果は省きますが,例えば盛岡〜二戸間の新幹線による通勤的利用にも応用できるエリア設定と言えます.

 二戸駅は新幹線停車駅となって利便性は確保されましたが,一戸駅はそれまで停車していた「特急」もまったくこなくなり,JRから切り離された駅になってしまいました.当時のIGR岩手銀河鉄道線盛岡〜一戸間の普通片道運賃が1,760円でしたから,IGR線による周遊きっぷの通勤的利用もお得になるかと思われます.

 アプローチ券ですが,前掲のものと同じ経由ですが,経由欄は前掲が「羽越・奥羽」(ゆき券の場合)に対し,右画像の券は「羽越」だけになっています.(2012年1月12日記述)




信越本線 新潟駅発行 2000年4月

アプローチ券経路のゾーン内通過(1)

 右画像は2002年9月まで発売されていた「鳥取・倉吉ゾーン」のゆき券,かえり券です.後述するように,「ゾーン券」については旅行中に紛失してしまいました.

 出発駅は白新線東新潟です.ゆき券の経路は,新潟駅を通って日本海縦貫線を敦賀まで南下,小浜線を通って綾部へ出て山陰本線浜坂を入口駅としています.

 かえり券は浜坂を出口駅として山陰本線の終点・幡生を経て山陽本線・東海道本線を東進,新大阪から東海道新幹線で東京へ出て,上越新幹線の経路(平行在来線経由)で東新潟まで戻っています.

 ゾーン券がありませんが,「鳥取・倉吉ゾーン」エリアはJR線は山陰本線浜坂〜鳥取間のみで,そこからまさに魚骨状に6本の盲腸バス路線(各終点は湯村温泉,鳥取砂丘,白兎神社,吉岡温泉,羽合温泉,三朝温泉)が伸びるエリアで,ゾーン券価格は3,600円でした.

 かえり券の出口駅「浜坂」はエラーです.購入時には出口駅はゾーン券エリア西端の倉吉駅として山陰本線を幡生へ向かう経路で依頼したのですが,マルスの「一件操作」では入口駅を入力すると「出口駅」も同じ駅で自動表示される機能がついているらしく,出口駅も「浜坂」として発券されてしまい,作者もそのミスに気付かずに受け取ってしまいました.

 ただ,この「ミス券」が功を奏します.ゾーン券利用最終盤になって「ゾーン券」を紛失してしまいました.あとは鳥取大学前駅に下車して西進するだけだったのですが,紛失に気付いたところで「かえり券」を見ると,浜坂が発駅,となっており,鳥取大学前で「途中下車」が可能だったのです.ミス発券によって紛失被害が食い止められた例で,なんとも不思議な感覚でした.

 本題からは逸れますが,かえり券面の右下にある「周割20幹★」の囲み文字は,「東海道新幹線(の一部)をアプローチ券の経由に入れているが,片道あたり営業キロ601kmを超えているので20%割引です」といった意です.経路に東海道新幹線を含み,片道あたり601キロ未満だと,「周割05幹★」と印字され,割引額もたったの5%です.JR東海ならではのセコいルールがここでも炸裂します.

 大型時刻表にも「ただし,[ゆき券]の線路上で(ゾーン内の)別の入口駅をいったん通過し,ほかの入口駅を周遊ゾーンの入口駅として指定することはできません.[かえり券]についても同様です」(JTB時刻表2012年7月号より引用,括弧書き部分のみ作者加筆,また,「線路上」は「経路上」の誤記かもしれないが,そのまま転記)とあることから,「アプローチ券の経路上で入口駅を跨ぐことはできない」(以下,本表題を含めこれを「アプローチ券経路のゾーン内通過」と表記します)と解釈できます.

 このルールの厳密な運用については分かりかねますが,画像の券のように「アプローチ券経路のゾーン内通過」が含まるどころか,ゾーンのJR線部分を100%含んだアプローチ券も少なくとも発券自体は可能であることが分かりました.

 それにしても,周遊きっぷの誤発券は本当に多いです.(2012年1月11日記述,10月16日加筆修正)




JR東海管内発行 2012年10月

アプローチ券経路のゾーン内通過(2)

 右画像は東海道本線金谷駅を発着駅とした東京ゾーン周遊きっぷです.「ゆき」券は静岡〜東京(都区内)を東海道新幹線経由としたもので,キロ数が601キロに届かないため,割引率は5%です.そのため,券面右下部分に「周割05/幹★」の囲み表示があります.

 一方,画像最下部の「かえり券」は経由をすべて在来線(東海道本線経由)としました.経路に東海道新幹線がまったく含まれないため,割引率は20%です.

 「ゆき券」の入口駅(東京(都区内))まで,経路上でやはり入口指定駅となっている新横浜駅(及び品川駅)を跨ぎますが,大型時刻表の「東京ゾーン」の注意書き欄には「新幹線でゾーン内に出入りする場合は,上野駅,東京駅,品川駅または新横浜駅が入口(出口)駅です」(「JTB時刻表」2012年7月号より)とあることからも,経路に関しては何ら問題はありません.

 しかし,右画像の「かえり券」の経路のうち,東京(都区内)から大船までは「東京ゾーン」と重なり,入口(出口)指定駅である「大船駅」を跨ぎます.大船駅を跨がないようにするためには,出口駅を「大船駅」として「大船から金谷ゆき(経由:東海道)」とすれば良いかというと,それだと営業キロ数が166.4キロしかないため,周遊きっぷの発券要件を満たしません.

 ちなみに右画像の「ゆき券」の経路をオール東海道本線経由に「変更」することが可能です.周遊きっぷの「変更」に関して,大型時刻表には以下のように記述されています.

 「一部券片でも使用開始後の周遊きっぷは,[ゆき券]または[かえり券]の経路が東海道本線(在来線)と東海道新幹線との相互間で変更となる場合を除き,きっぷの内容を変更することはできません.(以下略)」

 つまり,「アプローチ券の経路に東海道本線または東海道新幹線が含まれている場合,両経路相互の変更は券片使用開始後でも可能」だということです.この変更の取扱いについては別ページで詳述しましたのでここでは詳細を省きますが,右画像の「ゆき券」の新幹線経由を在来線経由に変更することは(券片使用開始後であっても)可能,つまり,「大船〜東京(都区内)間をアプローチ券経路のゾーン内通過」に変更することが可能です.

 このような点でアプローチ券経路のゾーン内通過不可のルールは矛盾を抱えているだけでなく,前項で掲載したかえり券「浜坂から東新潟ゆき」のように,マルスシステム上,アプローチ券経路のゾーン内通過をするものであってもエラーで突き返されることはなく,発券可能です.
 
 このように,特に東海道線の新幹線・在来線相互間のアプローチ券経路のゾーン内通過のルールに関しては別に内規等があるのかもしれませんが,発売の際には厳密な適用は行っていないようです.(2012年10月16日記述)




東海道本線 豊橋駅発行(上)・東京駅発行(下)
2012年12月


東海道在来線と東海道新幹線相互間の変更

 前掲のように,「一部券片でも使用開始後の周遊きっぷは,[ゆき券]または[かえり券]の経路が東海道本線(在来線)と東海道新幹線との相互間で変更となる場合を除き,きっぷの内容を変更することはできません」とあり,また,それに続いて「ただし,使用開始前の券片については1回に限り使用開始日の変更のみお取り扱いします」とあります.(JTB時刻表2012年11月号より).

 右画像上部は周遊きっぷ「東京ゾーン」に絡む「かえり券」で,出口駅は大船,東海道在来線経由で豊田町までの券片です.画像下部はそれを出口駅東京,経由を東海道新幹線に変更した「かえり券」です.下部の「かえり券」(東京都区内から豊田町ゆき)は東海道新幹線を経由に含み,かつ,営業キロが601キロに満たないため,割引率は5%になります.このようなアプローチ券の変更はJR東海の窓口だけの取扱いになり,マルスでの発券が出来ないため出札補充券により発行されます.

 蛇足ですが,この出補の券面右下には発行責任者と思われる認印が押されています.この約2ヶ月前に同じ窓口で同様の変更を行った際にはこのような認印はありませんでした.また,認印の名前と変更処理を申し出た窓口の出札職員の名前(名札)は異なることから,対応した窓口の出札職員を補充券発行の責任者とするのではなく,別に補充券発行に関する責任者を置いているようです.

 ところで,画像の変更前の「かえり券」は出口駅が大船ですが,変更後のものは東京都区内です.一部券片でも使用開始後は,東海道在来線と東海道新幹線相互の「経路の変更」が可能なだけでなく,大型時刻表にもあるように,東海道在来線と東海道新幹線との「相互間で変更」が可能なため,出入口駅の変更(東京ゾーンの場合,東京,品川,新横浜,大船が該当)も可能という解釈になるようです.

 東海道本線,東海道新幹線を経由に含むアプローチ券は,割引率(営業キロ600キロ以下は5%引き,601キロ以上は20%引き,但し学割はそれぞれ20%,30%引き)やJR東海とJR東日本やJR西日本との運賃配分等が発生するためか,東海道新幹線区間に関しては,いわゆる幹在の選択乗車は不可で,経由どおりの乗車が求められます.


東海道本線 東京駅発行 2012年12月

 なお,「かえり券」変更の際には,「新幹線は東京から静岡までで,静岡から先は在来線を使います」と出札担当に伝え,同時に東京〜静岡の新幹線自由席特急券(右画像)も購入したのですが,なぜか券面の経由欄は「新幹線,掛川,東海道」,つまり,東京〜掛川は新幹線経由,掛川〜豊田町は在来線経由となっています.

 周遊きっぷのルールを厳密に運用すれば,静岡〜掛川間は在来線経由での利用は不可のはずですが,このアプローチ券の場合,同区間の経路が幹在いずれであっても,区変処理により,もはや割引率,JR東海とJR東日本との運賃配分についての問題は処理済という考えが成り立つためか,在来線区間は掛川以西だけという券を発行したとも考えられます.

 但し,この考えを応用すると,一つ疑問点が浮かび上がります.例えばこの変更後の「かえり券」で東京から浜松まで東海道新幹線で向かうような場合です.券面の経由欄は,掛川以西「東海道」(在来線)経由です.

 大型時刻表には「経路上に東海道新幹線の区間が含まれる場合は,その区間は東海道本線(在来線)にはご乗車になれません.同様に東海道本線(在来線)経由のもので東海道新幹線にはご乗車になれません」とあります.浜松まで乗り越す場合,「豊田町⇒浜松」の乗車券だけの追加では掛川〜豊田町間が「在来線にのみ有効なかえり券」ということで,「掛川⇒浜松」の乗車券を追加しないと,この区間を新幹線経由とすることはできないのかもしれません.

 しかし,前述の割引率と運賃配分に関する経路の変更を済ませたアプローチ券であれば,こういった点は柔軟に対応するのかもしれません.いずれにしても実使用での確認はしていません.(2012年12月19日記述)




羽越本線 村上駅発行 2005年3月

東京近郊区間内完結のアプローチ券 

 この項と次項は実節約というより,ネタ的要素が強く,あくまで参考として紹介します.

 JTB時刻表(2011年10月号)には,「周遊ゾーンとの往復にJR線を営業キロで片道201キロ以上ご利用の場合に発売します」とあります.出発駅をゾーン内とすることはできないようですが,ゾーンと隣接した駅であっても,片道201キロ以上をクリアしていれば周遊きっぷの発券要件は満たします.

 東京ゾーンを例に取ります.右画像は東京ゾーンのエリア図です.東京ゾーンはほぼ大都市近郊区間の東京近郊区間に囲まれています.大都市近郊区間内で完結する乗車券は,券面に表示された乗車経路にかかわらず,他の経路を選択して乗車することが可能です(旅客営業規則第157条2項).

 このことから,130円区間の乗車券によって大都市近郊区間を大回り乗車する旅行がweb上でも盛んに紹介されています.このルールは「大都市近郊区間内では大回りしても,運賃は最短経路分でOK」とも解釈できます.

 そこで,例えばアプローチ券の出発駅を鎌取(外房線)とし,経路を外房線・(安房鴨川回り・)内房線で東京ゾーン入口駅を蘇我駅として発券してもらいます.アプローチ券(ゆき券)の営業キロは203.9キロですから,普通運賃3,570円の2割引で2,850円,になるのではなく,この経路はすべて大都市近郊区間(東京近郊区間)に含まれますから,外房線,内房線で房総半島をほぼ一周する大回りをしても,鎌取〜蘇我間の隣駅同士は最短経路の営業キロ5.0kmでの運賃計算となり,普通運賃は180円,アプローチ券は2割引(10円未満の端数は切り捨て)で140円になるはずです.かえり券も出口駅を蘇我とし,逆経路で鎌取のものを発券してもらいます.

 ゆき券(140円)+東京ゾーン券(4,000円)+かえり券(140円)=4,280円

 東京圏での通勤的利用では1日あたり860円程度となり,破格の安さです.

妄想券(一部村上駅2005年3月発行券をハメコミ合成)

 右画像は鎌取を出発駅とし,安房鴨川回りの大回り乗車で蘇我駅をゾーン入口としたアプローチ券と,東京ゾーン券の予想図です.経由に「安房鴨川」が入っていますが,恐らく不要で「外房・内房」で良いものと思われます.

 アプローチ券の有効期間は「大都市近郊区間内完結」のため,1日間です.鎌取〜蘇我間の最短距離営業キロ数から算出した180円のさらに2割引という斬新なアプローチ券価格が印象的です.ゾーン券のエリア図も気合を入れて画像編集ソフト「Adobe Photoshop elements ver.3.0」で作成すれば見栄えも向上したとは思いますが,マルス発券されたもののハメコミ合成で済ませてあります.

 途中下車に関しては,大都市近郊区間内完結乗車券ですから「下車前途無効」となっています.なお,この例では東京ゾーン内をまったく通過しない経路でアプローチ券を作成していますが,前項の「アプローチ券経路のゾーン内通過」で実例を挙げたように,ゾーン内を通過するアプローチ券も発券自体は可能であることを確認しています.

 アプローチ券でゾーン内を通過可能となれば,アプローチ券を140円の最安区間(130円区間の電車特定区間はゾーン内にすべて含まれているため,実質的に不可)のさらに2割引で110円の「ゆき券」「かえり券」も発券可能というとんでもない事態が出現します.こうなってくると,大阪近郊区間の「京阪神ゾーン」(最安アプローチ券は120円区間の2割引である90円が可能?),福岡近郊区間の「福岡ゾーン」(最安160円区間の2割引である120円が可能?)も発券自体は可能なのではないか?という突拍子もない事態が考えられます.

 果たして右画像のようなアプローチ券を伴った「周遊きっぷ」東京ゾーンは発券可能なのでしょうか?作者が思うに,「マルスでは発券自体は可能だが,発売できない」と考えます(実際はマルスでの発券自体も不可のようです).

 大都市近郊区間内で大回り乗車が可能という根拠「大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び回数乗車券(併用となるものを含む.)を所持する旅客は,その区間内においては,その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず,同区間内の他の経路を選択して乗車することができる」となっています.「普通乗車券及び回数乗車券」です.

 周遊きっぷのアプローチ券は普通(片道)乗車券のルールと同様の経路が指定でき,特定都区市内を発着する場合の運賃計算キロについても同様のルールを適用するものではありますが,アプローチ券はあくまで「ゆき券」「かえり券」であって,「普通乗車券」ではありません.

 鎌取〜蘇我間で安房鴨川回りのアプローチ券をマルス端末に入力していった場合,恐らくマルスの仕様上は140円のアプローチ券が発券されるとは思いますが,発売する際には経路の実運賃計算キロに基づく運賃,すなわち幹線203.9キロ(3,570円)の2割引である2,850円がアプローチ券1枚あたりの価格になるかと思います.

 恐らくですが,マルスでは鎌取〜蘇我2,850円のアプローチ券は発券できないと思われます.となると,出札補充券の出番も考えられますが,これも想像の域を脱しません(次項にあるように,出札補充券による発券となりました).

 いずれにしても,鎌取から内房線・外房線経由で蘇我駅を入口・出口駅とした「東京ゾーン」周遊きっぷそのものは「周遊きっぷ」のルールを満たしています.これについては発券を断る根拠自体はないと作者は考えます.(2012年1月11日記述,6月10日加筆修正,11月2日加筆修正)




JR東海管内旅行会社発行 2012年6月

東京近郊区間内完結アプローチ券の発売例 

 前項で記述した外房線鎌取駅を出発駅とし,アプローチ券を安房鴨川経由,入口駅を蘇我駅とした東京ゾーンの発売例を紹介します.

 発行箇所はJR東海管内の旅行会社です.ゆき,かえり券経由と東京ゾーンのそれぞれの利用開始日等のメモを提示して発券をお願いしました.旅行会社の係員は当初,マルス端末で発券を試みますが,エラーで突き返されたようで,旅行会社の本社?と電話で連絡を取って端末と格闘していました.しかし,結局は「発券に時間がかかるので,後日改めて受け取りに来てもらえますか?」と言われたため,こちらの電話番号を伝えて一旦帰宅しました.

 翌日,発券できたということで受け取りに行ったものが右の画像のものです.アプローチ券はいずれも出札補充券対応でした.事由欄は「片道乗車券」になっていますが,記事欄に「周遊きっぷ」とあり,「周割20」(20%引の意)の囲み文字や「ゆき」「かえり」の表記もあり,周遊きっぷのアプローチ券であることが分かります.経由は外房線〜内房線で運賃は安房鴨川回りで計算され,3日間有効となっています.

 このように,周遊きっぷのアプローチ券の場合,大都市近郊区間内完結のものであっても旅客営業規則第157条2項(他経路の選択)適用とはならず,券面経由に沿った旅行が求められます.

 出札補充券の券番ですが,ゆき券,かえり券の間で枝番が1つ飛んでいます.枝番「04」の補充券は手渡されていません.ゾーン券については後述しますが,補充券ではなく,マルスで発券されたものを手渡されています.

 番号が飛んでいる枝番「04」の券は,単に書き損じて廃札としたのか,あるいは「0円券」のようなゾーン券を書いて発行元預かりの証明のような券としたのか,興味深いところです.

JR東海管内旅行会社発行 2012年6月

 右画像は上述の出補と一緒に手渡された「ゾーン券」です.マルス端末券で横長の「ご案内」券も付いています.マルス端末で周遊きっぷの「ゾーン券」のみを単独で発券する機能が付いているのかは不明です.

 「東京ゾーン」内は自動改札設置駅が非常に多く,改札口によっては有人改札がなく,自動改札機しかない場合もあることから,自動改札対応のゾーン券で発券されることは実用面では大変ありがたいです.(2012年11月2日記述)




近畿日本ツーリスト アピタ向山店発行 2013年1月

周遊きっぷ「札幌・道南ゾーン」(2013年3月31日発売終了)

 2013年3月31日,周遊きっぷの発売そのものが終了しました.厳密には同日に使用開始となるゾーン券を伴う周遊きっぷの発売を終了する,ということですから,いずれにしても4月1日からは「みどりの窓口」に行っても「周遊きっぷ」は発売してくれません.

 いわゆる「周遊券」の歴史が幕切れたと言っても過言ではないと思われます.発券に手間(時間)がかかり,本ページに数例を挙げたように誤発券も多く,窓口(出札)箇所や業務量を極力簡素化したいであろう旅客各社にとって,足かせだったのかもしれません.発売終了は残念ですが,使いやすい便利な切符だったかというと,決してそんなことはなかったのも事実です.

 右画像の「札幌・道南ゾーン」周遊きっぷは作者が実購入,実使用した最後の周遊きっぷとなりました.東京都区内からこのゾーンまでの往復は,東北新幹線や寝台特急「北斗星」で札幌を往復するだけでも充分にモトが採れることで有名でした.

 画像の周遊きっぷのうち,「ゆき券」は在来線経由(IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道線経由),「かえり券」は東北新幹線経由です.差額は4,000円以上にもなり,両第3セクター鉄道の高額運賃がのしかかって来ます.

 「ゆき」は上野駅から北斗星号利用で札幌まで,「かえり」は札幌から急行「はまなす」の座席(自由席)と新幹線「はやて」で戻るつもりでしたが,2月24日の「はまなす」が本州内での豪雪により全区間運休となったことから,結局は「かえり」券片全額払い戻しとなり,札幌(新千歳空港)から飛行機で戻ってきました.

 なお,払い戻しに関しては旅行中止を申し出た札幌駅改札では申告の証明のみで,現金が返って来たのは約2週間後でした.払い戻しのまでの詳細は別ページに記述しました.(2013年5月30日記述)




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